4人に1人の若者が「家に居場所がない」。''寄り添わない''支援で生き抜くための手札を #豊かな未来を創る人
生き延びるために必要な"その場しのぎ"支援
── 家庭環境の問題を抱える若者たちを、どのようにサポートしているのでしょうか。 「自分の状態に気づいてもらう」こと。そしてそこから「大人になるまで生き抜いてもらう」こと。私たちはその2つのアプローチをしています。 まず「自分の状態に気づいてもらう」ことが必要なのは、若者たち自身が傷ついていることを自覚していないことも多いからです。特に幼い頃は、自分の家庭の状態を客観的に捉えることは難しい。嫌なことをされても、親だからそれが当たり前、もしくは自分が悪いからだと思ってしまう。無意識に傷が蓄積していった結果、気づいた頃には自分や他者を傷つける事態が起きていることもあるのです。 それを少しでも早い段階でくい止めるために、冒頭でお話した調査データをグラフィックアートで表現した展示会や、家にいたくない若者たちを集めた音楽フェスなど、クリエイティブによる気づくきっかけ作りを行っています。気づくタイミングが早ければ早いほど、事態の悪化を防げると考えています。
── そこから、生き延びるためのサポートというのは? 一つ目が「gedokun(ゲドクン)」という掲示板。これは家庭環境に困難を抱える若者たちが、大人に言えない本音を吐き出すための場所です。ゆるやかなつながりの中で、互いに共感したり、励ましあうことで、一日一日を乗りきっていく。その積み重ねが、次の一歩を踏み出す力につながっていくと考えています。
二つ目は、「nigeruno(ニゲルノ)」という情報サイトです。つらい体験をした当事者たちが家庭以外の居場所を見つけたリアルな体験談や、公的施設以外にも使えるサービスなどを掲載しています。 ここで私たちが定義する居場所というのは、公的な施設も含みますが、音楽や美術などの‟趣味"、友だちや彼氏のような‟人"、一人暮らしや留学などの‟手段"など、何でも良いんです。まずは家以外にも、自分の安全地帯があるのだと思える状態構築を目指しています。 やはり、いかに多くの選択肢を持っているかが重要です。先日、家庭環境に悩む子どもから「もう歌舞伎町に行くしかないです」というメッセージが送られてきました。八方塞がりになったときに選択肢が少ないと、トー横のような場所が輝いて見えてしまうのです。だからこそ、「nigeruno」では、建設的な行動につなげられる手札を、一つでも多く示していきたいです。