「たかが中受」と思えるか、おおたとしまささんが考える「中受ロス」の処方せん(上)
「家庭の軸」の作り方
――中学受験について家庭の軸を持つことの大切さにも触れています。家庭の軸とはどのようなものでしょうか。 中学受験をするにあたり、子どものキャラを理解し、親自身のキャラを理解し、そんな自分たちは何を犠牲にしてはいけないのかを決めることが、軸を決めるということだと思うんですよね。そうやって自分たちらしい中学受験のあり方を模索してほしい。家族一丸となって一生懸命やるんだけど、一方で、中学受験よりも大事なものはこれだよね、と言えるものがなかったら、すごく危ない。 「中受離婚」では、中学受験が原因で夫婦関係が壊れてしまうことに焦点を当てて描きました。子どもの自己像を傷つけてはいけないし、健康も大事。第1志望に受かってほしいのは当然だけど、それよりも大事なことを自分たちは既に持っている。そのことを自覚してほしいんです。 そこを確認しておかないと、第1志望がダメだったとき、すべてが無駄だったと思いがちです。中学受験をやって怖いのは、第1志望合格が100%の正義のようになり、そのためなら死んでもいいみたいに思ってしまい、気付かないうちに、家族にとってもっと大切な何かを失ってしまうという、最悪の事態が起こりうるということです。「たかが中受」と思える状況をつくっておいてほしい。 ――家庭の軸はいつ、どのように決めるといいでしょうか。 ケースバイケースではありますが、何が大切かということは常に考え、常にアップデートをすべきことではあると思いますね。家族のそれぞれが考え、どこかで共有するタイミングがあるといいですよね。模試の結果が出て不穏な空気になったときとか、あるいは結果が良くて調子に乗っているときなど、自然にタイミングが来るのではないでしょうか。自然な形で、親子の会話の中に盛り込めればいいんじゃないかなと思います。
葉山梢 EduA編集部 編集長