鶏卵抗体が脳出血を防ぐ/医療ジャーナリスト・安達純子
~新薬登場で重要度が増す~認知症の早期発見と予防19 認知症にはさまざまな原因があり、脳卒中といった血管障害を引き金に発症するケースもある。認知症の新薬「レカネマブ」や「ドナネマブ」は、神経細胞に悪影響を及ぼすアミロイドβ(タンパク質の一種)を除去する作用のため、脳卒中による血管性認知症は適用外になる。 「脳出血の原因となる微小出血が、虫歯菌(cnm陽性ミュータンス菌)の場合、虫歯を予防すれば微小出血と、それに伴う認知症リスクを軽減できます。当センターでは簡便で正確に診断できる『AI認知症脳ドック』で、微小出血が見つかってcnm陽性ミュータンス菌検査で陽性の人に、来春から新たな臨床試験をスタートさせる予定です」と、国立循環器病研究センター脳神経内科の猪原匡史部長は話す。 臨床試験で用いるのは鶏卵由来の「IgY抗体」。ニワトリから卵に受け継がれる抗体で、人間が食べてもその抗体の作用を生かせるという。cnm陽性ミュータンス菌をターゲットにした商品はすでに発売され、猪原部長はそれを応用し、微小出血とcnm陽性ミュータンス菌を持つ人を対象に予防効果を検証する予定だ。 「従来は、脳ドックのMRI(画像検査)で微小脳出血が見つかっても、根本的に解決する治療がありませんでした。患者さんにとっては、脳出血や認知症のリスクの恐怖だけが残る。この状況をIgY抗体で変えることができればと思っています」と猪原部長は話す。