ノリスのスタート失敗の記録とチームの見解。ポールからは必ず後退、1周目に稼いだポジションはゼロ
F1オランダGPを圧勝したランド・ノリス。しかしスタートでは順位を落とし首位を失った。しかもそれは、今回が初めてではなかった。 【写真】2024年F1第15戦オランダGP スタートシーン オランダGP終了後の控え室で、マックス・フェルスタッペンとノリスとの間で、こんなやりとりがかわされていた。「ちょっとホイールスピンしたってこと?」「アクセルを踏んだ瞬間だったよ」 その結果、ノリスは、フェルスタッペンにコンマ3秒の大差でポールポジションを獲得していたにもかかわらず、2番手に後退してしまった。 「完璧なスタートを切るために何をしなければいけないか、僕らはもちろんよくわかっている」と、ノリスは言う。「でもスタートで起きていることは、ものすごくマージンの少ない世界なんだ。オランダでは僕とオスカー(・ピアストリ)が、揃ってスタートを失敗した。何か根本的な問題があるのではないかと思う。スタートセッティングが適切でなかったか、重視すべき何かを見落としていたか、そのいずれかだろうね」 ■2024年オランダまで、1周目にポジションを上げた回数はゼロ ノリスのスタート失敗は、オランダGPが初めてではない。下の表で明らかなように、今季のノリスはスタートで一度も順位を上げることができていない。 グランプリ/1周目終了時のポジションの変動/失ったポジション数 バーレーン/7番手を維持/0 サウジアラビア/6番手を維持/0 オーストラリア/3番手を維持/0 日本/3番手を維持/0 中国 - スプリント/1番手から7番手へ/6 中国 - グランプリ/4番手を維持/0 マイアミ - スプリント/ストロールと衝突/- マイアミ - グランプリ/5番手から6番手へ/1 エミリア・ロマーニャ/2番手を維持/0 モナコ/4番手を維持/0 カナダ/3番手を維持/0 スペイン/1番手から3番手へ/2 オーストリア - スプリント/2番手を維持/0 オーストリア - グランプリ/2番手を維持/0 イギリス/3番手から4番手へ/1 ハンガリー/1番手から3番手へ/2 ベルギー/4番手から7番手へ/3 オランダ/1番手から2番手へ/1 最初の9戦では、それほど深刻なダメージは受けていない。中国GPでのスプリントレースで6つ、マイアミでひとつ順位を落としたのが目立つ程度だ。 ところがMCL38の競争力が向上し始めたスペインGP以降、事態は悪化して行った。 バルセロナのノリスはポールポジションをフイにし、2つ順位を落とした。反応速度は悪くなかったが、フェルスタッペンにイン側から、アウト側からはジョージ・ラッセルに抜かれて行った。二度目のポールスタートとなったハンガリーGPも同様だった。 「スペイン、そしてハンガリーは、最初のコーナーまでに長いストレートがあった」とアンドレア・ステラ代表は説明する。「スペインでは、ラッセルはスリップストリームのおかげで(ターン1出口で4位からトップに浮上し)アドバンテージを獲得できた」 「そしてハンガリーでは、ギヤのシフトアップに問題があった。ギヤがスリップし、低いギヤに入ってしまって勢いを失った」とステラは分析する。 「ランドはもっとうまく、ホイールスピンをコントロールできたかもしれない。しかし問題は、我々のセッティングにあった。あの路面コンディションでは理想的なものではなかったことを、今は認識している」 ■ピアストリには大きな失敗はなし スペインGP以降だけでも、ノリスは最近の4戦で順位を落としている。イギリスでひとつ、ハンガリーでふたつ、ベルギーで3つ、そしてオランダでひとつ、ポジションダウンしているのだ。 対照的にチームメイトのピアストリは、スタートに関する限り彼よりはるかに優れた成績を収めている。確かにオランダではひとつ順位を落としたが、マイアミでは3つ、スペインで2つ、ハンガリーとベルギーで1つ順位を上げている。 「オスカーは現時点で、最高のスタートを切るドライバーの一人だ」とノリスは認める。「でも僕も、それほど引き離されているわけじゃない。今の失敗の連続は、本来の僕の姿じゃないと思っているよ」 「特にオランダのスタートは、今までとは違うものだった。では何だったのか。今までの失敗を受けて、スタートの改善に取り組んできた。手順的にもうまく行った。なのに失敗した。スタートでの一貫性を、絶対に見つける必要があるね」 ■ポールから必ず順位を落とす憂慮すべき傾向 F1でのノリスは、ポールポジションからスタートして首位を維持できたことがこれまで一度もない。オランダGPのスタート失敗を含めると、1番グリッドからスタートしたにもかかわらずレースをリードできなかったのは、これで実に6回目だ(2021年ロシア、2023年サンパウロ/スプリント、そして今シーズンの中国/スプリント、スペイン、ハンガリー、オランダ)。 ステラ代表は、ノリスが自分自身を批判する傾向が強いことを認識しつつ、チームにもやるべきことはまだあるという。 「スタートはレースの基本的な要素であり、マシンパフォーマンスと同じくらい重要だ。ライバルたちが我々よりこの分野で優れているとしたら、その理由を注意深く検討する必要がある」 「つまりはスタート手順を実行するドライバーの観点と、チームの観点の両方から、何を改善できるかを考える必要があるということだ」 ノリスのスタートを分析したところ、問題の多くは第2フェーズで発生していることが判明した。シグナルに対する反応時間と最初の発進は良好だが、その後の加速でスタックすることが多いのだ。それはなぜなのか。いずれにしてもこうしたエラーが繰り返される限り、たとえ最速マシンを手にしていても、タイトル奪還の可能性はますます遠のいてしまうだろう。 [オートスポーツweb 2024年08月30日]