J内定も国立に辿り着けず涙 “10番”が継ぐべき凡事徹底の系譜…川崎入りDFはJ先輩から金言【コラム】
静岡学園は5年連続となるPK戦での敗退…川崎内定DF野田も涙
大津に並ぶ優勝候補と位置付けられていた静岡学園も、等々力競技場で行われた1月5日の準々決勝で東福岡にPK負けしてしまった。静岡県勢は5年連続となるPK戦での敗退だというから、悔しさはひとしおだろう。 「今回のチームはオールAと言うのか、全体的に能力の高い選手が多い。ただ、松村優太(鹿島)や古川陽介(グールニク・ザブジェ)のようなドリブルでフィニッシュまで持っていけるスーパーなアタッカー、神田奏真(川崎フロンターレ)のような点取り屋がいなかった」と川口修監督も評していたが、勝負決定付けられる前線の人材不足は確かに目についた。 そんななか、川崎フロンターレ内定のキャプテン野田裕人は右サイドバック(SB)のポジションから頭脳的なインナーラップを披露。縦関係を形成する神吉俊之介、原星也らと絡んで決定的チャンスを作り出そうとトライし続けた。しかし最後までゴールをこじ開けられず、PK戦では4番手に登場し、まさかの失敗。今年から本拠地となるスタジアムで辛い結末を強いられたのである。 「冷静に入ったつもりではいましたけど……外しちゃいましたね。どこかで気持ちが高ぶっていたところもあったのかもしれないし、GKが大きく見えたところもあったのかもしれないですね……。フロンターレサポーターの方々も来てくださったのに、悔しい姿を見せてしまったので『自分はこんなもんじゃないよ』っていうのをこのピッチで見せるように頑張っていきたいと思います」と本人は試合後に見せた涙をしっかりと拭って、先を見据えていた。
プロに必須な“フィジカル”をOB関根が説く
川崎には大島僚太、田邊秀斗、神田と静学出身が3人いて、向島建スカウトも大先輩だ。元々性格的に明るく、ハキハキと自分の考えを口にできる野田はそういった人々のサポートを受けながら、プロの世界に迅速に適応できるだろう。 ただ、右SBで出番を得るのは簡単なことではない。指揮官が鬼木達監督から長谷部茂利監督に変わるとはいえ、昨季試合に出ていた佐々木旭やファンウェルメスケルケン際らが序列的に上と見られるだけに、その牙城をいかにして崩していくかがポイントになる。 「選手権前に関根(大輝/柏レイソル)さんが(静学の)谷田グランドに来てくれたんですけど、プロで戦うにはフィジカルがないとダメというのもイメージできたし、やっぱりチームメートの信頼を掴まないと試合には出られないし、パフォーマンスも出せない。強度にも慣れないといけないし、もがくしかないかなと思います」と本人も気合を入れていた。 タイプ的には2022年カタールワールドカップ(W杯)日本代表の山根視来(LAギャラクシー)に通じる攻撃的な右SBだが、長谷部サッカーの中では守備力は必須。その基準をどう引き上げていくのか。プロ1年目から本気で勝負に打って出てほしい。 選手権を経て、プロ入りする高卒選手は年々少なくなっているが、だからこそ、J1にチャレンジする18歳の若手の動向は大いに気になるところ。その一挙手一投足を注視していきたいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa