浦和FW前田直輝「賛否はあると思うけど…。他の人につけてほしくない」 興梠慎三の背番号30を継承
J1浦和のFW前田直輝が9日、さいたま市内でチーム練習後に取材に応じ、昨季限りで現役引退した元日本代表FW興梠慎三の背番号30を継承した思いを明かした。 今月7日に発表された25年シーズンの選手リスト。背番号30の欄には「前田直輝」の名前が記された。名古屋から完全移籍した昨季背負った38番から変更。J1歴代2位の通算168得点を誇る浦和のレジェンドが長年つけた番号を受け継いだ。 「ものすごく偉大な番号だと重々分かっている。変な話、賛否はいろいろあると思うけど、自分の中でどれだけできるかというチャレンジでもある。あれだけかわいがってもらい、ピッチ内外で助けてもらった先輩の番号を他の人につけてほしくない。そういうのも含めて決断させてもらった」 背番号決定の経緯については「本当にディープな話をすると…」と切り出し、明かしてくれた。 前田が新加入した昨年の沖縄キャンプの際、興梠とともにインタビューを受ける機会があった。ほとんど面識はなかった興梠から「グランパスの時からこいつのプレーは好きで、やっと浦和はいい補強をしたと思った」と熱い言葉を受けた。「期待していただいてるのを重々感じてた中で去年のプレー(24戦2得点)だったので、ふがいなさは心の中であった」と前田は言うが、興梠の思いは変わらなかった。 昨年7月31日。引退発表会見を行った興梠から、30番について「前田直輝に付けてもらうのが、僕は一番いいかなと思っています」と指名された。「一番最初はふざけながら『おまえ、つけろよ~』と言ってくれて、『いやいやいや~』みたいな感じだった」と振り返った。 だが、「自信をなくしてた時期も正直あった」と前田は明かす。昨季最終節・新潟戦の後、埼玉スタジアムで行われた引退セレモニーで、満員のファン・サポーターから大声援で送り出される先輩の偉大さを目の当たりにした。 「あれだけ愛されてる慎三さんのセレモニーを見て、僕なんかが引き継いでいいのかという迷いも正直あった。でも、その葛藤してる時は慎三さんは何も言わず、決めるのは僕自身だから。なよなよしてた自分にたぶん、慎三さんに腹が立ってたんでしょうね…」 12月中旬頃、互いにオフ中のため直接会えなかったが、前田は興梠に連絡を入れた。「(30番を)つけさせていただきます」と告げると、「やっと決めたか」と温かい言葉をもらった。 常にチームの勝利を追求しながら、得点を重ねた興梠からの学びを聞かれた前田は、「勝ちに対する気持ち」と即答した。一方で、興梠との違いもある。「慎三さんはチームが勝てるなら自分が点を取らなくていいというスタンスだった。僕はチームが勝つ、プラスαで点を取りたいし、アシストしたい。僕はそこには貪欲になりたい」と言い切った。 主戦場の右MFは、チーム屈指のドリブル突破を誇る大久保智明に加え、ベルギー1部コルトレイクから新加入のMF金子拓郎ら、強力なライバルがひしめく。「毎年ポジション争いは激しいので、そこに勝っていきたい。偉大な番号を受け継ぐところで、どれだけ皆さんに認めてもらえるかのチャレンジもある」と前田。浦和2年目、背番号30番を背負う勝負のシーズンが始まる。
報知新聞社