J1の7.4再開決定裏に“JリーグPCR検査センター“独自設置の異例努力
さらに愛知医科大学大学院医学研究科の三鴨廣繁教授(臨床感染症学)からは、検査の効率化とスピード化が図れる、唾液を検体として採取するPCR検査の実施をこんな言葉で推奨されている。 「従来の鼻腔で行う検査はもう限界だと思っています。唾液による検査は鼻腔と比べて検出感度がほぼ同じというデータも出ていますし、国も近いうちに認可してくれると聞いています」 懸念されたのはPCR検査を受ける上で国民の窓口になっていた保健所が、さまざまな業務負担がかかりすぎたあまりにパンク状態になっている状況だった。ゆえにJリーグ内に「PCR検査センター」を新設し、唾液検体の採取や収集、分析、データ管理、プライバシー保護などを一元化させる施策だった。 「検査センターにはもちろんスタッフを配置しますが、検査のノウハウを私たちはもちあわせていません。ですので、実際に検査を動かしていくのは、それぞれの地域にある検査機関になります。契約段階なので検査業務の委託先などの公表は差し控えさせていただきますが、臨床の場でPCR検査を実践されている方々を中心として、チームを編成していく形になると考えていただければ」 短い時間で準備を進め、わずか1週間前までは難しいと位置づけていたPCR検査、6月20日から実施できる構想を描けるまでに至った。慌ただしさを極めてきた過程で、村井チェアマンは最も腐心した点として「民間の医療機関をじゃまする存在に、私たちがならないことでした」とこう振り返る。 「鼻腔ではなく唾液を調べるので、クラブハウスに集まったその場で全員の分を集めて送るといった形で、検体の採取も非常に簡単にできる。検査自体も一定の時間に、例えば1時間で100検体ほどの分析ができると聞いているので、民間医療機関への負担も大幅に軽減できると考えています。 ただ、特定エリアで国民のみなさまの検査を優先させるような事態が生じれば、私たちとしてはPCR検査をいったんストップした上でそのエリアへ解放して、沈静化を待って再び進めることも考えています。国民のみなさまの健康を第一とする姿勢は、これからもまったく変えません」 スポーツ界では日本相撲協会とプロ野球の巨人やソフトバンクが、希望する会員や選手に抗体検査を実施している。しかし、抗体検査は過去に感染していたかどうかを調べるもので、確度が100%ではないものの、現時点における感染の有無を組織全体で調べるPCR検査はJリーグが初めてとなる。