70代の父、突然の病で危篤に。元気な母には「認知症」の兆候が…長男と二男で「遺産分割」を進めることは可能か?【司法書士が解説】
成年後見人制度の「落とし穴」
認知症となり、口座を凍結されて預貯金も引き出せず、不動産等の管理もできず、遺産分割協議にも参加できないとなれば、「成年後見制度」を利用して、成年後見人を交えて解決していくしかありません。 しかし、成年後見制度の利用については、デメリットも多く存在します。 そもそも成年後見制度とは、意思能力のない方の財産を管理する「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらうのですが、専門家が就任するケースが非常に多くあります。 その場合、専門家に月々1万円程度の報酬を支払わなければいけません。 仮に親族が選任された場合でも、成年後見人を監督する「監督人」が付くケースも多くあります。監督人に報酬を支払うという点では、利用のデメリットは変わりません。 「成年後見制度=財産を守るための制度」なので、相続財産を自由に使うことは難しくなります。 また、この制度は一度利用すると変更や取り消しは事実上で不可能となります。 認知症の方が意思能力を回復すれば、この制度の取り消しは可能です。しかし、現実的に認知症になってから回復して成年後見制度を辞める事例は極端に少ないので、なかなか難かしいといえます。 成年後見制度の詳細については、記事 『夫の年金で暮らす妻、法定後見人のひと言に思わず「どうやって生きていけばいいの!」…トラブルが絶えない〈法定後見制度〉の実態【司法書士の助言】』 で解説しています。あわせてご確認ください。
成年後見制度の利用を回避する方法
相続において「認知症の人がいることで財産を自由に使えなくなる」といった事態を回避するには、どうすればいいのでしょうか? また、成年後見制度を利用せずに相続をするために、事前にできる対策はあるのでしょうか? 成年後見制度をの利用を回避して相続をする方法としては、 (1)家族信託の利用 (2)遺言書の作成 (3)生前贈与の活用 が挙げられます。 (1)家族信託の利用 家族の資産について、管理・処分だけでなく、運用についても委任することができるので、積極的に相続財産を運用していくこともできます。相続財産のすべてではなく、不動産だけを任せる、などの指定もできるため、非常に有効な相続対策になります。 (2)遺言書の作成 公平な遺言を残すことで、遺言書の通りに相続することができれば、遺産分割協議を行わずに相続手続を終えることができます。 (3)生前贈与の活用 没後の相続分となる財産を、前もって贈与することが可能です。ただ、相続開始前の3年前までのものは相続税が課されるので注意が必要です。専門家のアドバイスをもとに相続対策を講じていただければと思います。
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