父が「認知症」になってきた気がして、とても不安です。認知症になると「銀行口座が凍結される」と聞いたことがあるのですが、どのような準備をしておけばよいのでしょうか?
認知症になると銀行口座が凍結されると知り、「うちの親はまだ大丈夫だろうか」と焦りを感じている人もいるでしょう。認知症になると即時に銀行などの取引ができなくなるわけではありませんが、銀行の判断によって口座が凍結される可能性は高くなります。 本記事では、認知症になると預貯金の整理や引き出しなどの取引はどうなるのかを解説するとともに、高齢者の安全な預貯金管理をサポートするサービスも紹介します。 ▼祖父の部屋から「大量の小銭」を発見! 申告は必要? 勝手に使うのはNGなの?
認知症を発症した場合は金融機関との取引が制限されるのが一般的
認知症とは、さまざまな脳の病気の影響で、記憶や判断力などの認知機能が低下した状態です。もの忘れなどの症状が起きる、「アルツハイマー型認知症」がよく知られています。 認知症を発症すると、契約手続きや預貯金の出し入れなどの行為が徐々に難しくなるだけでなく、判断能力の低下によって、詐欺被害や消費者トラブルにあうリスクも高まります。そのため、銀行などの金融機関は、認知症を発症した顧客との本人取引は望ましくないとして、取引を停止する(いわゆる口座凍結)のが一般的です。 銀行は、認知症を発症した顧客との取引においては、やむを得ない場合を除いて「成年後見制度」の利用を推奨しています。また、やむを得ず認知能力が低下している本人と取引する場合は、顧客が金銭的な被害にあうことを未然に防ぐために、引き出したお金の使い道などの確認を行う傾向です。 表題のケースのように認知症に「なってきた気がする」程度の状態であれば、単に加齢によるもの忘れなどのこともあり、本人の認知能力に取引上の問題はないと判断される可能性があります。その場合は、預貯金の解約や整理などに当面の支障はないでしょう。 しかし、金融機関によっては、認知症の傾向が見られる時点ですべての取引を断るケースもあること、将来的に認知症が進行して症状が顕著になれば取引が難しくなることに注意が必要です。
親族の代理取引や社会福祉関係機関の支援のもとでの取引ができる場合も
全国銀行協会は、認知判断能力が低下した顧客との取引の指針として、顧客の財産保護の観点から、成年後見人などの法定代理人を介することを基本としています。ただし、次のようなケースについては、各金融機関の判断のもとで家族や親族が取引を行えることもあります。 ・本人から銀行に任意代理人が届け出られていた場合 ・成年後見制度の利用ができないケースなどで、本人の利益に適合する(本人の医療費の支払いなど)場合 また、本人に契約締結能力がある場合は、社会福祉協議会が提供する「日常生活自立支援事業」などの公的なサービスを契約することで、次のようなサポートを受けながら金融機関との取引を継続できるケースもあります。 ・預貯金の払い戻しや預け入れへの同行 ・委任契約にもとづく支援者による代理取引