YOASOBIの「アイドル」とは安倍晋三のことである…支持者を熱狂させ批判者の心をかき乱した悲劇の宰相の正体
■なぜ岸田政権は不人気だったのか それから菅政権、岸田政権を経て2024年10月、安倍政権批判の急先鋒だった石破茂氏が総理の座に就任した。安倍支持者にとっては悪夢の始まりであり、「それなら岸田を支持して政権を続かせていた方がよかった!」ということになるかもしれない。 だが安倍支持者だった人たちの多くは岸田政権に批判的だった。それは、この安倍政権のイメージの取り違えが影響している可能性がある。 岸田氏の総裁選不出馬を受けて、岸田政権を総括する記事が各メディアに掲載されているが、外交関係者からは軒並み高い評価を受けている。これは保守派の大勢とは対照的だ。 防衛費の増大、反撃能力保有を明記した戦略3文書の公表、憲法改正にも意欲的。安倍政権も検討してきた反撃能力やスタンド・オフ防衛能力の保有も明文化している。ロシアによるウクライナ侵攻を受けてのウクライナ支援表明は、ウクライナから勲章を受けるほど評価されており、G7各国との足並みもそろっていた。 一方でイスラエルとガザ地区(ハマス)の間の紛争については、日本独自の立場を保ってきた。「安倍政権に比べて対中姿勢が弱腰だ」ともいわれるが、安倍政権が検討していた習近平の国賓待遇での来日なども、岸田政権では行われていない。 ■「安倍は保守、岸田はリベラル」は本当か 安倍支持者はLGBT法案の成立を批判するが、安倍政権ですら政権公約に掲げていたLGBT法程度で、岸田政権を見限る合理的な理由がない。安倍支持者は高市早苗議員を総理総裁に推す声が強かったが、高市議員もLGBT法案には賛成の立場であることを明言している。 一方、石破政権では外交・安全保障における安倍路線の継承が行われるかは未知数。かねて「反安倍路線」を取る石破氏を評価してきた朝日新聞は、総裁選翌日の一面に〈「安倍路線」転換、有言実行を〉との政治部長の論説を掲載している(と言ってもその実は憲法9条第2項削除論やフルスペックの集団的自衛権容認など、とても朝日が賛成できるものではないはずなのだが)。 安倍支持者の「岸田下げ、高市上げからの石破総理誕生」は故事成語でも生まれそうな教訓を含む。 「お花畑」の左派とは違い、現実的な安全保障政策を望むはずの保守派が、こうした政策を評価せず、むしろ岸田政権に批判的、あるいは推すことはなく距離を置いていたのはなぜか。 その一つに、安倍は保守だが、岸田はリベラルとの評価があるのだろう。だが前述の通り、岸田政権は外交における安倍路線は継承しただけでなくむしろ発展させた面もあるうえ、そもそも国際的に見たら「安倍はリベラルの守護者」だったのだから、路線は継承している。