「大手まんぢゅうを育てて鍛える」 岡山の老舗6代目がカフェやソフトクリームで広げた特化戦略の幅
廃棄される皮で染めたエコバッグ
大手まんぢゅうに使われる小豆の皮は「食品ごみ」として、週に200~300キロ、廃棄されています。大岸さんは2020年12月、捨てられるはずだった小豆の皮で染めたピンク色のエコバッグを作り、クラウドファンディング(CF)で発売しました。 エシカルな取り組みには、生産者への強い思いがありました。 大岸さんは大学を出て就職するまで、小豆の仕入れ先である北海道士幌町の農家に住み込み、農作業に従事した経験があります。 「小豆は大雨が降れば色が流れ、商品として出荷できなくなります。農家の皆さんは収穫の何日も前から天気を気にして、収穫のタイミングを計っていました。傷がつき廃棄される小豆がたくさん積まれている様子も見ました。そうした姿に触れると、我々も小豆を一粒一粒、大事に使わなければと感じていました」 赤飯は小豆の煮汁で色を付けます。大岸さんはそれを応用し、自身で小豆の皮を煮て白いシャツに染色しました。「小豆そのもので染色するよりも、ほどよいピンク色になり、いけるのではと思いました」 エコバッグを選んだのは、レジ袋の有料化のタイミングと重なり、世間へのインパクトがあると考えたからでした。後継ぎ仲間で、倉敷市でデニムブランドを手がける「ITONAMI」に相談。同市の浦上染料店や県などの協力も得て、ピンク色のエコバッグが完成しました。 菓子業界は、全国的に小豆の収穫量が落ちているという切実な問題に直面しています。大手まんぢゅうのあんこは、士幌町産のエリモショウズという高品質な小豆を使っていますが、農協や農家にとって栽培するメリットが薄れれば、調達ルートを失いかねません。 「だからこそ産地との関係は大切にしなければいけません。『小豆を大切に使っています』という思いを、エコバッグに込めています」 士幌町のふるさと納税の返礼品には、大手まんぢゅうとエコバッグのセットもあり、産地との緊密な関係がうかがえます。