「大手まんぢゅうを育てて鍛える」 岡山の老舗6代目がカフェやソフトクリームで広げた特化戦略の幅
地元企業とのコラボを加速
地元企業とのコラボはさらに加速しています。 2022年からは、岡山県を代表する百貨店・天満屋と、敬老の日に合わせた「オリジナル包装紙」の企画を行っています。祖父母などの似顔絵を入れたオリジナル包装紙で包んだ大手まんぢゅうを、贈ることができるキャンペーンです。 「子どもたちが似顔絵を描いて、親世代が購入し、祖父母が食べる。3世代に広がる企画です。若い世代に大手まんぢゅうを売るのは大変ですが、祖父母の家で似顔絵を見ながら食べてもらえれば、将来も買ってもらえるかもしれません」 2023年末には岡山市の宮下酒造と手を組み、ビールの発酵に必要な糖分に大手まんぢゅうを用いたクラフトビールを開発し、CFで発売しました。「大手まんぢゅうファンの方が、甘いものを食べない人にもビールを贈ることができます」
いつかは「きびだんご超え」を
大岸さんは2、3年以内の事業承継を見据えて準備を進め、介護休暇や育児休暇の整備など就業規則の見直しにも着手しています。「私の子どもは3姉妹です。将来後を継ぐかもしれないと考えれば、女性が働きやすい環境も整えないといけません」 大手まんぢゅうを核にした経営は、今後も変えることはないと言います。「新商品に力を入れすぎると、本体がおろそかになる恐れがあります。歴史があっても消えるお菓子はたくさんあるなかで、我々は大手まんぢゅうを育てて鍛えていく道を選びました」 それは、現状維持ではありません。ソフトクリームやカフェ、エコバッグなど大手まんぢゅうとの「出会い」を広げ、磨き上げる企画には今後も注力していきます。 「岡山土産と言えばきびだんごですが、それが大手まんぢゅうになればいいと思っています。ネットによって、情報の壁も低くなっています。地元の人が推してくれる大手まんぢゅうが全国区になれるよう、地元のナンバーワンを目指したいです」 いつかは「きびだんご超え」を。小さなまんじゅうに、大岸さんの夢がぎっしりと詰まっています。
広部憲太郎