多くの人が知らない…漢方薬の原料になっている、身近すぎる「食材の名前」
私たちにとって身近なツボや鍼灸、漢方薬。近年、そのメカニズムの詳細が西洋医学的な研究でも明らかになってきています。例えば「手のツボが便秘改善に効くとされるのはなぜ」「ツボに特徴的な神経構造が発見された?」「漢方薬が腸内細菌のエサになっている?」など、興味深い研究が数多く報告されているのです。最新の研究では一体どんなことが明らかになっているのでしょうか。 【写真】「二日酔い」でもお世話になる漢方薬、「水分」を調整する、すごいメカニズム 東洋医学のメカニズム研究の最前線をとりあげた一冊、『東洋医学はなぜ効くのか』(講談社ブルーバックス)から注目のトピックをご紹介していきます。今回は、漢方薬の原料である「生薬」についてです。 *本記事は、『東洋医学はなぜ効くのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。 *漢方薬を服用する場合には、医師・薬剤師に相談し、決められた用法・用量を守ってください。
「身近な食材」を原料にしたものも
漢方薬は、植物、動物、鉱物などの天然物からなる生薬を調合してつくられます。日本で医療用に使われている生薬は、137種類になります(2022年現在:日本漢方生薬製剤協会調べ)。そのなかにはケイヒ(桂皮:シナモン)やみかんの皮を乾かしたチンピ(陳皮)など、私たちの身近な食材を原料にしたものも少なくありません。 例えばカンキョウですが、体を温めることで有名な生姜を蒸してから乾燥させてつくる生薬です。主な成分はショーガオールで、血管拡張作用や抗炎症作用などがあり、科学的にも体を温めたり体調不良の改善に役立ったりするはたらきが確認されています。 また、チンピには、ヘスペリジンという成分が含まれていて、胃のはたらきを高めるだけでなく、意外にもウイルスの増殖を抑える作用も報告されています。古くから、冬にみかんの皮を入れたお風呂で温まったりする習慣がありますが、先人たちの知恵に驚きを隠せません。 ---------- ----------
山本 高穂(NHK チーフ・ディレクター)/大野 智(島根大学医学部附属病院 臨床研究センター長・教授)