東京五輪1年延期で再燃したサッカー森保代表監督の兼任是非
一方のフル代表も、昨年から試合内容に停滞感を漂わせることが多い。頭打ちの状態にあると言っていい。例えば2次予選に関しても、同じグループに入った4カ国との実力差と試合内容とを照らし合わせれば、4戦全勝という結果を手放しで喜ぶことはできない。 昨年11月のベネズエラ代表との国際親善試合では、前半だけでまさかの4点を奪われる完敗を喫した。国内組だけのメンバー編成で臨んだ12月のEAFF E-1サッカー選手権でも、宿敵・韓国との最終戦で0-1のスコア以上の力の差を見せつけられて苦杯をなめている。 新型コロナウイルスの影響でフル代表、五輪代表ともに空白状態が生じているいまだからこそ、フィリップ・トルシエ氏以来の兼任監督となった2018年夏以降の軌跡をJFAは検証すべきだろう。 当初描かれていた、2つのカテゴリーを一人の監督に任せるメリットは生まれているのかどうか。残念ながら答えはノーとなる。2000年のシドニー五輪、2002年の日韓共催ワールドカップの指揮を執ったトルシエ氏のもとで促進された、大胆な世代交代の波は現時点で訪れていない。 一貫して[3-4-2-1]のもとで戦ったトルシエ氏とは対照的に、森保監督はフル代表を[4-2-3-1]で、五輪代表を[3-4-2-1]で戦っている。不可解さが解消されないなかで、兼任監督体制で盛んになると期待された後者から前者への選手の引き上げも、国内組だけで臨んだEAFF E-1サッカー選手権や、五輪世代を多数招集したコパ・アメリカなどを除けば、堂安律、冨安健洋、久保建英、板倉滉ら数人にとどまっている。 JFAの田嶋幸三会長(62)や技術委員会の関塚隆委員長(59)は、兼任体制の是非を問われるたびに、まるで呪文のように「サポートしていく」という言葉を繰り返してきた。2つの代表チームの指揮を執ることが物理的に不可能な以上は、サポートという言葉が何を意味するのかわからない。