猫が「猫草」を食べる意外な理由←獣医学博士の研究結果「ねこ医学会」も注目
「非常食」や「おやつ」の可能性
ーー苦くないことが条件なんですね。 「イネ科やマメ科の植物は植物の中でもタンパク質が多く、比較的栄養が豊富な植物とも考えられます。猫草の代表である『エンバク』や『オオムギ』は旨味成分も豊富なようで、植物にしてはおいしいのかもしれません。やはり猫が食べる草は苦味と渋味が少なく、旨味がある…つまり、ちょっとおいしいことが条件みたいです。しかし、予想に反してスギナも同じ傾向でした。スギナ、お前もちょっとうまいんか……なんで?などと、夜な夜な研究中にひとりで突っ込んでいたのは内緒です」
鍵を握るのは「ネズミ」!?
ーー「猫草」は猫にとってサプリ的なものなんでしょうか? 「仮にそうだとしても、肉食動物としては肉を食べたほうが効率的です。ただ、野生では常に獲物を捕えられるわけではありません。イネ科やマメ科の雑草はそこかしこに生えているので、もしかしたら、猫のお腹が減った時の非常食(あるいはおやつ)として、猫の体が受け付けるようになっているのかもしれません。 あるいは、野生猫の主食であったネズミやウサギが好んで食べるのがイネ科やマメ科の牧草であることも理由のひとつかもしれません。特に猫はネズミを丸呑みにしますから、ネズミの消化管内に含まれる植物が、猫にとって毒であればひとたまりもありません。猫は進化の過程で、ネズミやウサギが主食とする植物に適応していった可能性も十分考えられます。これは一般的な臨床獣医師にはない発想で、野生動物の調査経験のある私ならではの意見かもしれません」
猫が喜ぶアレの謎も
岩崎さんは猫が庭先で出合いそうな野草……カラスノエンドウ(マメ科)、ネズミムギ(イネ科)、猫がまれに食べるというスギナ(トクサ科)の他、猫が食べたと報告されていないヘラオオバコ(オオバコ科)やハルジオン(キク科)、セイヨウタンポポ(キク科)の6種の植物の味覚分析を実施。 その結果、「やはりカラスノエンドウは苦味や渋味が少なく、旨味もあることがわかりました。 これは予想通りで、過去に報告した猫草の代表『エンバク』と同じ結果でした。ただし、繰り返しになりますが、カラスノエンドウを猫に積極的に与えることを推奨しているわけではありません」と、岩崎さん。 すでに40種ほどの植物の味覚データを集め終わり、現在、論文を執筆中だという。 「猫じゃらしとして名高いあの草や、猫が喜ぶアレなんかもデータを取得しています。論文発表を楽しみにしていてください」(和猫研究所所長 岩崎永治さん) (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)
まいどなニュース