箱根駅伝「青学大の山が強すぎる」問題…「平地は全く走れなくなる」選手が語った“特殊区間への覚悟”それでも「山に懸ける想いがあれば…」
6区で区間新記録を出した野村の場合は…?
1月3日、レース後の表彰式。 6区を走った野村は壇上でわずかに片足を引きずり、蟹の横這いのように階段を下りていた。左足の裏に水膨れができたのだという。 無理もない。5区の若林から託された襷を胸に、箱根の山を滑るように下ってきたのだ。史上初の56分台(47秒)で、2位の中央大に3分49秒、3位の駒澤大に4分7秒もの大差をつけた。ライバルを1km以上突き放し、圧倒的なアドバンテージとして追撃する駒澤大をかわす最大の勝因になった。戦いを先読みしていた野村は明かす。 「山決戦になることはわかっていました。出雲駅伝と全日本大学駅伝が終わって、平地では少し青学が劣っているところがあって、勝てる区間は安定して昨年も走った山の5、6区だと思っていました。だから、56分台を出せばおのずと後ろも離れてくるだろうという考えで走っていました」 野村は強気なランナーである。 昨年4月、チーム内で書き込む個人目標で6区の「56分台」とぶち上げた。前回は12秒差で区間2位。だから、今年の箱根駅伝10日前、あらためて原に宣言した。 「56分台を出します」
指揮官も「すごい。ものすごいヤツだ」
原の内心を聞こう。 「とぼけたこと、言ってましたから。そう簡単に出るもんじゃないぞと心の中で思っていたのですが、有言実行でした。かっこよかった。最後の最後までスピードが落ちることなく、後ろから車で見ていて『すごい。ものすごいヤツだ』と思いました」 この日、立役者だった若林はなにも持たずに会場を引き揚げた。 最優秀選手である金栗四三杯も、今年から新設された優勝チーム対象の大会MVPも、6区を走った野村が手中に収めたからだ。2冠の男は茶目っ気を交えて言う。 「若林も自分も狙っていたんです。若林が区間賞区間新を出して、アイツにMVPを獲られそうだなと思ったので、自分も区間賞区間新でやり返してやりました」 そう明かすと目じりを下げた。 原の深謀。若林の信念。野村の豪気。指揮官が整えた舞台を山の両雄が見事に演じきった。
(「箱根駅伝PRESS」酒井俊作 = 文)
【関連記事】
- 【現地写真】「こ、これがスペシャリストの太腿…!」長距離ランナーでは異例の「スクワット重視」の若林の大腿四頭筋…「めっちゃ仲良さそう…」給水で“乾杯”した田中キャプテン&黒田くん・若林くんのハグも見る
- 【《エース黒田》編を読む】「箱根駅伝は分かりません! 黒田が12位です」テレビ実況も“ダマされた”…青学大2区・黒田朝日“12位からの大逆転劇”、記者が見た「最強留学生への戸惑い」
- 【あわせて読む】「陸上人生で初…なんだコレ」青学大・原晋監督“じつは異常事態だった”3区、失速の原因は? それでも箱根駅伝で負けない異様さ…TV解説者の“発言”
- 【こちらも読む】箱根駅伝「史上最速の2区」で分かれた“エースたちの明暗” 青学大・黒田は晴れ晴れ、国学院大・平林はうつむき…駒大・篠原は「適性には勝てない」
- 【青学大の誤算】「この順位はヤバい」青学大“1区10位”の誤算でも…じつは余裕だった? 原晋監督が予言していた“箱根駅伝の圧勝プラン”「普通に走れば独走」