箱根駅伝「青学大の山が強すぎる」問題…「平地は全く走れなくなる」選手が語った“特殊区間への覚悟”それでも「山に懸ける想いがあれば…」
高校時代から「目標は箱根の山」だった若林
和歌山県海南市で育ち、かけっこを始めたころから山が近くにあった。体重が軽かったこともあり、駅伝では坂道がある区間を任されてきた。 「中学校はほとんど妄想みたいな感じだったんですけど、陸上で高校に入ると決めた時に、目標は、箱根駅伝、そして山だと思っていました」 京都・洛南高に進学後、山上りの練習メニューではライバルたちに先行した。 小柄でも自分らしさを発揮できる居場所を見つけた。だから、箱根駅伝のテレビ中継を見れば、山を駆ける姿に心を奪われていった。 青学大に入学した若林には山に挑む覚悟があった。4年間でもっとも取り組んだという練習メニューに意志の強さが滲む。 「筋力トレーニングが一番かなと思います」 ほんわかした口調がこの時ばかりは一転、きっぱりと言い切る。 「山はパワーとメンタルです。5区で最後の追い込みとなる、小涌園から動く選手と動かない選手の差って、体つきができているかできていないかだと思います」 若林が明け暮れたのはスクワットだ。 「普通は(長距離では)あまり使わないのですが、山上りは大腿四頭筋をかなり酷使するので、四頭筋を鍛えるトレーニングは非常に多かったです」 一方で、なにかを得ることは、なにかを失うことでもある。 若林は極めることの意味をわかっていた。そして、“普通のランナー”であることを捨てた。 「山に向けたトレーニングはやっぱり特殊なので、山は走れるのですが全く平地が走れなくなります。でも、そこ(山上り)を追求する思いがあるならできることなのかなとは思っています」 速く走るためには裏の筋肉を使え。これはよく言われるランナーの摂理だ。裏の筋肉、すなわち、ハムストリングスが平地では推進力を生む源になる。若林が日々鍛えてきた大腿四頭筋は太ももで表の筋肉だ。スクワットで表と裏の筋肉のバランスを崩し、トラックなど平地で走るスピードを犠牲にしてまで、山に生きようとした。 昨年11月に記録した1万mの自己ベスト27分59秒53は、大学生でトップ級の域である。だが、若林は達観している。 「もともと大学1年の時に28分20秒を出していますし、それを考えたらかなり時間がかかったなと自分の中で思っています」 天下の険から学んだことは多い。1年から5区を任されて区間3位。2年でも走る予定だったが、心身の不調を訴えて欠場。だが、3年では心を奮い立たせて区間2位の好走を見せた。走るたびにタイムも伸ばし、1月2日に有終の美を飾った。春にはサラリーマンとしての生活が待つ。原から名づけられた「若の神」はにこりと笑った。 「根性だけは人一倍あると思うので、その根性でなんとか乗り切っていきたいですね」
【関連記事】
- 【現地写真】「こ、これがスペシャリストの太腿…!」長距離ランナーでは異例の「スクワット重視」の若林の大腿四頭筋…「めっちゃ仲良さそう…」給水で“乾杯”した田中キャプテン&黒田くん・若林くんのハグも見る
- 【《エース黒田》編を読む】「箱根駅伝は分かりません! 黒田が12位です」テレビ実況も“ダマされた”…青学大2区・黒田朝日“12位からの大逆転劇”、記者が見た「最強留学生への戸惑い」
- 【あわせて読む】「陸上人生で初…なんだコレ」青学大・原晋監督“じつは異常事態だった”3区、失速の原因は? それでも箱根駅伝で負けない異様さ…TV解説者の“発言”
- 【こちらも読む】箱根駅伝「史上最速の2区」で分かれた“エースたちの明暗” 青学大・黒田は晴れ晴れ、国学院大・平林はうつむき…駒大・篠原は「適性には勝てない」
- 【青学大の誤算】「この順位はヤバい」青学大“1区10位”の誤算でも…じつは余裕だった? 原晋監督が予言していた“箱根駅伝の圧勝プラン”「普通に走れば独走」