〈子のいない夫婦〉車はジャガー、大型犬を飼い、ヨットでクルーズという“勝ち組ライフ”だったが…66歳夫との死別で妻が痛感した「相続の苦労」
75歳、1人のこされたNさん自身の「終活」
1人暮らしのNさんは、いつ何があってもいいように、合鍵を妹さんと、長年の犬友であるお隣さんに渡してあるという。そして、「延命措置は拒否、葬式はなし。遺骨は夫と同じ場所に散骨してほしいという要望書を書いて、冷蔵庫に貼ってあるの」 夫君の遺骨は、ヨット仲間によって海に撒かれた。 「散骨サービスをする業者に頼めば、ちゃんと遺骨粉砕して、海に溶ける紙で梱包してくれるの。ヨット仲間は10人だから10個作ってもらって。それにお花を添えて、みんなで散骨したの」 その同じ場所に、自分のお骨と、歴代の犬たちの遺骨も撒いてもらう約束をしているのだという。 マンションと財産は姪っ子さんに残すことを、遺言書に書いた。 「遺言書は手書きじゃなきゃダメだから、いまの私たちには大変よ。パソコン慣れしてるから、字がちゃんと書けないじゃない? 行書のような崩し字はダメ、楷書でしっかり、誰が読んでも読めるように書かなきゃいけないから」 あ、それ1番苦手、と私は思った。60歳のいまでも、自分で書いたメモが読めない(笑)。終活用に、ペン字でも習おうか。 遺言書 遺言書には、本人が自筆で書く「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人が作成する「公正証書遺言」があります。費用や手間はかかるものの、法律上の不備を避けられるのは後者です。 横森 理香 一般社団法人日本大人女子協会 代表作家/エッセイスト