〈子のいない夫婦〉車はジャガー、大型犬を飼い、ヨットでクルーズという“勝ち組ライフ”だったが…66歳夫との死別で妻が痛感した「相続の苦労」
市役所で、銀行で、自宅で…Nさんが行った「死後の手続き」
〇市役所で ・火葬費見舞金申請(5万円) ・夫君の印鑑証明破棄 ・夫君の健康保険証の返却 ・死亡届後、戸主証明書の申請(戸籍謄本、住民票、印鑑証明など) ※今後の名義変更に必要な証明書(医師の死亡診断書を含めて)は、数通ずつ用意 〇社会保険庁で ・夫君の厚生年金、国民年金の終了手続きと、遺族年金の申請 〇家庭裁判所で(弁護士に代行してもらうものもあり) ・相続手続き(動産、預貯金、不動産) 〇銀行で(相続確定後の手続き) ・夫君の預金通帳口座の解約 ・夫君のクレジットカード解約 〇自宅で ・車の所有名義、自動車保険契約者の変更 ・夫君の生命保険の解約、火災保険や地震保険の契約者変更 ・公共料金契約者名義と引き落とし口座の変更(電気、ガス、水道、各種保険、NHK等) ・お世話になった方(主治医ほか)へのお礼状(葬儀の報告も含め) ・葬儀、お悔やみなどへのお礼(葬儀参列者のほか、香典、花、弔電、メール、自宅への焼香など)
相続権の3分の1が認知症の義母に…「子がいない夫婦」ならではの苦悩
子がいないため、相続はまたややこしいことになったという。子どもがいない証明書も提出せねばならず、戸籍謄本は20通も必要だった。 「子どもがいないから、私たちの住むマンションの3分の1は、義母に相続権が行っちゃうの。でもお義母さんは認知症でグループホームにいたから、相続権放棄の書類を作成するのに、お義姉さんに成年後見人になってもらって、代行してもらったの」 不思議な話だが、夫の死後、夫婦で住んでいたマンションの一部がお義母様のものとなり、もしお義母様が元気で守銭奴だったら、売却して遺産を分割せねばならないのだ。しかし、後見人となったお義姉様が遺産を放棄してくれたので、Nさんは住み続けることができた。 「このへんの手続きはもう素人では無理なので、司法書士さんにお願いして、相続証明書を作ってもらったの」 法定相続情報一覧図 被相続人の相続関係を一覧にした家系図のようなもので、相続にまつわる負担が軽減できます。作成方法は、法務局のホームページから申請書をダウンロードし、管轄する登記所へ必要書類(故人の戸除籍謄本等)を提出。交付手数料は無料で、複数枚の発行が可能です。 自筆遺書、定期預金…夫がのこした「置き土産」 相続証明書には、夫君の自筆遺書もついている。財産は100パーセント妻に残すという文面だ。司法書士への謝礼は30万円だったというが、法的効力のあるちゃんとした証明書を作ることで安心できた。 「最近になって、またひとつ相続があったの。ゆうちょの10年定期預金が満期になりましたって連絡があって」 それは3年前のこと。お義母様はすでに亡くなっていた。すると、この預金は2分の1をNさん、4分の1ずつをお義姉様2人と分割相続することになる。しかし、2人は辞退したという。