3000人以上の最期と向き合った緩和医療医が明かす、多くの患者が後悔したことは?「思い残すことはない」と言い切った患者の共通点は<準備>を進めていたこと
◆「人生はあっという間であった」 私が遭遇した、終末期の患者さんが後悔する3のこと 1 やりたいことをやらなかったこと やりたいことをやらないと、最期に後悔します。やりたいことは、さっさとやるべきです。 「人生はあっという間であった」とは、私の接した患者さんたちの少なからずが言い残された言葉です。 そのため、やりたいことはどんどんやらないと「あっという間に」人生の最期の日が来てしまいます。 私たちはしばしば、見えない鎖に縛られすぎていることも少なくないように感じています。 我慢し続けて良いことなどこれっぽっちもないというのが私の考えです。 「あっという間に」人生の最期の日が来るという事実を直視すれば、度を越した我慢がいかに不適切なものかが理解されます。 私もたくさんの方の最期を見届けてきましたが、自らの心の声に耳を傾け、やりたいことを行った方々は間違いなく輝いていました。 死を前にしてもお顔は穏やかで、後悔も少なかったように見受けられました。 後悔しない生き方にとって必要なことの一つは、自分を取り戻すことだと感じます。 言うは易く行うは難しかもしれませんが、その殻や鎖から少しだけ自由になることから始めてみましょう。
◆健康なうちに 2 ふるさとに帰らなかったこと 死が近くなると、人は昔を思い出すものです。個人差はありますが、例えばがんの末期の場合に、亡くなる1週間前ごろから「終末期せん妄」といって意識が変容して、時間や場所の感覚が曖昧になることがあります。 あるいはそれより少し前の段階で、昔のことを語りだす人がいます。意識はしなくても、人の心の奥底に眠っていた幼少期のことや、かつて住んでいた場所、そこでともに生きた人の記憶が顔を出すのです。 そのためでしょうか、死が迫ると、ふるさとに帰りたい、親の墓参りをしたいという人も中にはいらっしゃいます。しかし、病状によってはすでに故郷に帰ることが難しくなってしまっていることもあります。 故郷を訪れるならば、健康なうちが良いでしょう。体が動かなくなってしまってからでは遅いのです。 私の知っている患者さんに余命が1、2か月以内とも思えるほど衰弱されてから、里帰りを実行した人たちがいます。 それをきっかけに生命力を取り戻して何と1年近く生きた人、故郷で幸せな最期を迎えた人もいます。それらの方の場合は、故郷に行くことが人生にプラスの影響を与えたように見えました。 ただ、誰もが同じことをできるわけではありません。死期が迫ってから後悔しないように、早めに計画・実行していくとよいでしょう。