タグ・ホイヤーからパネライまで、話題の“サブダイヤルをあえて6時位置以外に配置した”腕時計3選
1.TAG HEUER(タグ・ホイヤー) タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ
モノサブダイヤルの人気を牽引する1本。昨年発表したグラスボックス形の「カレラ」のスタイルに、3時位置に30分積算計をサブ装備するクロノグラフに仕上げた。ケースエンドぎりぎりまでのドーム形サファイア風防、サーキュラーサテン仕上げのティールグリーンダイヤル、ピストン型プッシュピースなど、全体にヴィンテージ感も漂う。 【写真】タグ・ホイヤーからパネライまで、記事の画像を全て見る
2.PANERAI(パネライ) ルミノール クアランタ スティール DLC ルナ・ロッサ
9時位置にスモールセコンドのサブダイヤルを置いた3針モデルは、今夏の第37回アメリカズカップに挑戦するセーリングチーム「ルナ・ロッサ プラダ ピレリ」とのコラボモデルの新作。赤白のロゴが入ったダークブルーのストラップや、サンブラッシュ仕上げのブルーダイヤルなど、チームのカラーコードが精悍に映える。
3.ZENITH(ゼニス) デファイ スカイライン
自動巻き、SSケース&ブレスレット(交換可能なブルーラバーストラップが付属)、ケース径41㎜、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、10気圧防水。¥1,210,000/LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス TEL:03-3575-5861
単一のサブダイヤルをあえて6時位置以外にレイアウトしたモデルが、ブランドの垣根を超えて人気を集めつつある。異色の“モノサブダイヤルのアシンメトリーデザイン”は確かに新鮮な印象だ。 歴史上初めての登場というわけではなく、そもそもは1968年にデビューしたホイヤー「DATO45」で一世を風靡したデザインだ。クロノグラフでDATO=日付表示付きという当時最先端モデルは、9時位置のデイト小窓の対照位置に45分積算計を置いた。そのエキセントリックな魅力は、ギリシャ神話のひとつ目の巨人に由来する「サイクロプス」のニックネームを生み、いまもヴィンテージ市場では圧倒的な人気を誇る。 腕時計のサブダイヤルは、多くは全体の安定的な均整を保つように置かれることが多い。スモールセコンドは懐中時計の時代でも6時が定位置だったし、ツーレジスターやスリーレジスターのクロノグラフでも、左右か上下でシンメトリーを描くが暗黙の了解だ。だからこそ余計に、アウト・オブ・ルールが斬新に映る。 腕時計の世界から離れても、隻眼・眼帯姿のヒーローは心躍る存在だ。独眼竜・伊達政宗や剣豪・柳生十兵衛、海外では第二次ポエニ戦争の猛将ハンニバル。アニメ・コミック界では天才外科医ブラック・ジャックはじめ、片目隠しのキャラクターが定番だ。 共通するのは、破調の美が生み出す独特のリズム。モノサブダイヤルが独創的な位置を取る時、文字盤は生き生きとしたダイナミズムを語るのである。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
写真:渡邉宏基(LATERNE) 文:並木浩一