「トイレに大量の血が」大腸がんが肺に転移で“余命2年半”から諦めずに回復した奇跡の漫画家
奇跡的に経過観察に
さらに、この時期に描いた漫画が賞を受賞。大きな励みとなった。それをきっかけに、ずっと気になっていた自らの余命について、主治医に思い切って尋ねると、「あくまで目安だが、2年半」と告げられた。 「がん告知当初の私だったら、泣き崩れていたと思います。でも、そのときには冷静に、だったらそれまで家族と楽しい思い出をつくりたいと。主人といつか行きたいねと話していたお遍路に、家族3人で行くことにしたんです。さらに前向きになれました」 26回の抗がん剤治療を終えたころ、強い薬によるダメージの蓄積で身体が悲鳴を上げた。これ以上は耐えられないと判断され、維持療法(進行予防のための抗がん剤療法)に移行することに。 先行きに不安がよぎったが、約1か月後の検査では、直腸と肺どちらの腫瘍も悪化が見られなかった。強い抗がん剤を投与していないのに悪化しないことから、肺の転移腫瘍は瘢痕化(細胞として死んでいる状態)していることがわかり、ついには手術可能となったのだ。 判明から2年後、直腸がんの切除手術を行い、腫瘍を取り除くことができた。 そして、経過観察となった現在、くぐりさんは自身の闘病経験が誰かの役に立てばと情報を発信し続けている。 「闘病記を読まれた方に“気づくの遅すぎ”“放置しすぎ”とツッコまれてしまうこともあって(笑)。でも本当に思い込みや判断ミスで発見が遅れてしまったのは致命的だったなと。つらい治療、副作用、そして死と直面するたびに後悔の念がありました。みなさんはそうならないように、ぜひ定期検診を受けてほしいと、心から思います」 お話を伺ったのは……くぐりさん●夫、中学生の息子と暮らす漫画家。37歳のときに大腸がんステージ4と診断され、約2年間、抗がん剤による標準治療を行い、無治療経過観察になるまでの記録をまとめた電子コミックが話題に。『痔だと思ったら大腸がんステージ4でした 標準治療を旅と漫画で乗り越えてなんとか経過観察になるまで』(KADOKAWA)。 取材・文/當間優子