【映画『室井慎次』考察】『踊る大捜査線』は2024年も有効なコンテンツたり得るのか? 今後を占う「ふたつのカギ」
同時代ヒット作との<4つの特徴>
年末にスペシャルドラマ『踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル』(1997年)が放送されると、24.9%の高視聴率をマーク。その翌年に放送された『踊る大捜査線 秋の犯罪撲滅スペシャル』(1998年)も、25.9%という数字を記録した。マニア層に支持されていたはずの『踊る』は、あっという間に国民的ドラマへと駆け上っていったのである。 その後公開された劇場版が歴史的大ヒットを飛ばしたことは、みなさんご存じのとおり。特に2003年に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』は、現在に至るまで実写邦画歴代興行収入第1位という金字塔を打ち立てている。 ■『踊る大捜査線 THE MOVIE』(1998年、興行収入101億円) ■『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年、興行収入173.5億円) ■『交渉人 真下正義』(2005年、興行収入42億円) ■『容疑者 室井慎次』(2005年、興行収入38.3億円) ■『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』(2010年、興行収入73.1億円) ■『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年、興行収入59.7億円) これまでも、テレビドラマの劇場版は数多く作られてきた。だが『踊る』の数字は、他の作品を完全に圧倒している。『踊る』と放送年が近い作品と比較してみよう。 ■『GTO』(フジテレビ) ・ドラマ第1シリーズ(1998年、平均視聴率28.5%) ・映画『GTO』(1999年、興行収入13.2億円) ■『トリック』(テレビ朝日) ・ドラマ第1シリーズ(2000年、平均視聴率7.9%) ・ドラマ第2シリーズ(2002年、平均視聴率10.6%) ・ドラマ第3シリーズ(2003年、平均視聴率15.6%) ・映画『トリック劇場版』(2002年、興行収入12.9億円) ・映画『トリック劇場版2』(2006年)興行収入21.0億円 ・映画『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』(2010年)興行収入18.6億円 ・映画『トリック劇場版 ラストステージ』(2014年)興行収入18.0億円 ■『HERO』(フジテレビ) ・ドラマ第1シリーズ(2001年、平均視聴率34.3%) ・ドラマ第2シリーズ(2014年、平均視聴率21.3%) ・映画『HERO』(2007年、興行収入81.5億円) ・映画『HERO』(2015年、興行収入46.7億円) ■『ごくせん』(日本テレビ) ・ドラマ第1シリーズ(2002年)平均視聴率17.4% ・ドラマ第2シリーズ(2005年)平均視聴率28.0% ・ドラマ第3シリーズ(2008年)平均視聴率22.8% ・映画『ごくせん THE MOVIE』(2009年)興行収入34.8億円 ■『木更津キャッツアイ』(TBS) ・ドラマ第1シリーズ(2002年)平均視聴率10.1% ・映画『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(2003年)興行収入15億円 ・映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』(2006年)興行収入18億円 これらの作品と『踊る』を比較して浮かび上がるのは、以下の4点となる。 ■1.テレビドラマが第1シリーズのみで終わっている ■2.ドラマの終了から劇場公開までのスパンが短い ■3.テレビドラマが特に高視聴率ではない ■4.スピンオフも含めて劇場版タイトルの数が多い マニアックな刑事ドラマだった『踊る大捜査線』は、その熱が冷めやらぬタイミングで劇場版を公開して大ヒットを記録し、その後もあえてテレビドラマに回帰せず、映画というリッチなコンテンツに集約させることで、人気を拡大させていったのだ。