三井化学の人事戦略 足を運んで会話する「泥臭い取り組み」がカギとなる
グローバル規模でタレントマネジメントを進め「後継者候補準備率」を可視化
――こうした課題に対応するため、貴社では「グループ統合型人材プラットフォーム」を構築してタレントマネジメントに活用しているとうかがいました。 タレントマネジメントの前提は、グループ内のタレントを把握し、選抜して、育成やアサインメントを行うことです。これらをいかに計画的にデザインできるかが鍵だと考えています。適切なアサインメントのためには適切なポジションが必要。戦略遂行のための重要ポジションを定め、タレントを育てて後継者計画を立てるまでが一連のメカニズムです。 その実行のため、当社は2022年にグローバル共通の人事管理システムを導入し、グローバルの統合プラットフォームとして運用を開始しました。コア人事システムと呼ばれる、あらゆるポジションや人事に関する情報を整理する機能と、タレントマネジメント機能を包含したシステムを、全世界120の子会社と本体で統合したのです。 ――かなり大規模な統合プロジェクトだったのですね。 ここまでやったのは、グローバルに人材交流を進め、人的資本がどのような状態にあるのかを可視化すべきだと考えたからです。以前はグローバル人事の情報をタイムリーに見ることができず、職種別にタレントが何人いるのかも把握できていませんでした。経営側から「DXに資する人材はどこにいるのか」と問いかけられても、すぐに回答できない状態だったのです。人材戦略を遂行していく上で、タレント情報をグローバル規模で可視化する必要性を痛感していました。 数百人規模のハイポテンシャル人材を抽出するだけなら、アナログの力業でも何とか対応できるかもしれません。しかし国境を越えたグループ2万人の人材ポートフォリオを可視化することは、人事の目だけでは絶対に足りず、テクノロジーの活用が必要不可欠でした。 ――グローバルでのタレントマネジメントは、どのように進めているのですか。 CXOクラスを選抜する場合を例に取れば、全社レベルで経営陣が集まって議論する場と、もう少し分解して部門内で議論する場の二本柱で進めています。 まずは部門内においてグローバルで活躍する「キータレント」をピックアップし、個別育成計画を議論。この「キータレント」の中から、さらに上のCXOクラスの候補者である「経営者候補」を選抜して経営層のレイヤーで議論しています。これらはそれぞれ年1回行い、タレントプールの見直しも毎年実施。前年の育成計画通りに進んでいるかについてもフォローアップし、PDCAが回るようにしています。 こうした議論の結果は取締役会の報告事項としており、取締役監督者からの指摘や助言を得られる仕組みにしました。当社ではCXOクラスの候補者をつくるタレントマネジメントのKPIとして「後継者候補準備率」を設け、100前後ある戦略ポジションに対して後継者候補準備率250%を目標に置いており、現状では230%前後で推移しています。