DV父に皿で殴られ、小2で祖母を「強制介護」…友達趣味なし月13万円非正規で働く30歳男性が過ごした「地獄」
誰も取り合ってくれない
いま思えば、これが村田さんへの本格的な虐待の始まりだった。殴る蹴るの暴行だけでなく、「死ね」「切腹しろ」と言った暴言を吐いたり、ランドセルをゴミ箱代わりにしたり、シャワーの熱湯をかけてきたりと、あらゆる方法で村田さんを痛めつけていく。 「父にとって、祖母の介護を押し付けることは、虐待の良い口実になったんだと思います。介護のためと言えば理不尽なルールも強要できるし、それを守れなかったという建前で虐待も正当化できる。そのうえ祖母が認知症なのを良いことに、『おばあちゃんがお前にいじめられたと話している』と、当てつけのようなことを言って暴行してきました。 父は裕福な家庭に育ち、末っ子として兄弟からも甘やかされ、いじめっ子であった過去を自慢することもありました。そうして誰にも咎められずに育ってきた父は、野放図で凶暴なまま大人になり、特に理由もなくストレスの捌け口として暴力を振るっていたのだと思います」 加えて、祖母の介護に奔走することで、村田さんは週1回ほどしか学校に通えなくなる。週に何回かはヘルパーが来て、入浴や洗濯などの世話をしてくれたものの、村田さんはご飯の用意や掃除をせざるを得なかった。しかも認知症の祖母は、ご飯を食べたことを忘れて文句を言ったり、気に入らない献立だと床にぶちまけたりと、話の通じない相手に村田さんは疲弊した。 子どもながら学校の先生にも訴えたが、担任は「お父さんから事情は聞いています」と相手にしてくれなかった。何らかの「口封じ」が行われたのか、学校側がかかわろうとしなかったのかはわからない。 他にも、テレビで図書館などから情報を得て、児童相談所や法務省の電話相談窓口「子どもの人権110番」にSOSを求めた。しかし、児童相談所からは具体的な実害が出ないと対応できないと言われ、子どもの人権110番からは「感謝しながら介護すれば楽しくなる」と要領を得ない答えが返ってきた。こうして家庭という密室で、村田さんは父の暴力と祖母の介護に消耗し続けた。