ウナギの生態、新事実の発見と深まる謎
各地で最高気温が30℃を越え始め、そろそろ本格的な夏を迎えました。夏バテ防止で土用の丑の日にウナギでも……と思って日付を調べてみると、今夏は7月29日(火)のみ。毎年夏場に2回あると思い込んでいましたが、今年は二の丑がないようです。ご注意を。 ところで、ウナギは近年漁獲量が減少し、価格の高騰を伝えるニュースをよく見かけます。ニホンウナギは、2013年には環境省の日本版レッドリスト「絶滅の恐れがある種」に、今年6月には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに指定されました。 減少の原因は、過剰捕獲や海洋、河川環境の変化が考えられています。しかし、ウナギの生態には謎が多いとされ、長年はっきりとした理由がわからないといわれてきました。近年、ようやくウナギの産卵場所が判明するなど、従来の謎は解明されつつあります。なぜ、ウナギは「謎多き生物」なのか。土用の丑の日を前に、改めてウナギの生態に迫ってみましょう。
ついに判明した産卵場所
古代ギリシャ時代にアリストテレスが著書の中で「ウナギは泥の中から自然発生する」と書いたり、日本では「山芋変じてウナギと化す」、ヨーロッパには「ウナギは馬の尻尾が落ちてできた」という言葉があったりするほど、ウナギがどこで卵を産み、成長するのかはベールに包まれていました。一番の原因は、毎年河川にウナギが姿を現しているにも関わらず、ウナギの卵が見つからなかったからです。 長らく謎とされていた産卵場所は、2009年に東京大学大気海洋研究所の塚本勝巳教授らによって解明されました。実は、川で暮らすウナギは日本列島から2500kmも離れた太平洋のマリアナ諸島付近で産卵。その後、生まれた子どもは「レプトセファルス」という幼生の状態で北赤道海流に乗って成長しながら西へ進み、台湾沖から黒潮に乗って、シラスウナギと呼ばれる稚魚に変態します。 さらに黒潮に乗って北上し、日本の沿岸、河口域に到達。河川へ遡上し、成長期を川や池で過ごして成魚になります。成熟すると産卵のために再び海へ戻ってマリアナ諸島付近へ回遊し、一生を終えるとされています。