スマホばかり見ていると思わぬ事態に…「大脳白質が劣化する」衝撃の研究結果
脳が腐敗する
オックスフォード大学出版局が12月2日に発表した「2024年の流行語」は「brain rot」だ。これは「脳の腐敗」と直訳され、「頭を使わないオンラインコンテンツを過剰に消費した結果、知性が劣化した状態」を意味する。この言葉は'23年と比べて、実に3倍以上も使用頻度が急増。このことからもわかるように、いま英語圏では、「オンライン漬け」の状態に対する強烈な危機感が増している。 【画像】「スマホで失明」危険度チェックリスト…注意したい「急性スマホ内斜視」とは なかでも問題視されているのが、スマホがないと不安になる「スマホ依存」だ。依存は、自覚なく進行していくもの。何気なく使っているだけで、いつの間にかスマホなしでは生きていけないような気持ちになる─そんなスマホ依存が世界的に懸念されているのだ。 「実は、スマホ依存のメカニズムは、薬物依存やアルコール依存とかなり似ている」と指摘するのは、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏だ。 「スマホの特徴はマルチタスクという点です。なにかをしていると、別の通知が来て意識がそちらに行き、また元のアプリに戻って……を繰り返す。スマホを持っているだけで、次々と情報が飛び込んできてしまう。こうしたマルチタスクは脳に負担をかけつつも、一方で快感にもなっているとみられています」 スマホのなかでも危険視されているのがSNSだ。矢継ぎ早に情報が飛び交い、刺激的な映像や写真、文言が耳目を集める。 子どもにスマホを渡すと、途端にスマホ中毒になり、SNSに脳を支配されてしまう─。そうした危機感から、オーストラリアでは、11月末に16歳未満の子どものSNS利用を禁じる法案が可決された。 「これは未成年の飲酒を禁じる考え方とまったく同じです。スマホとアルコールから、子どもを守る。社会にはその責任があると言えるでしょう」(川島氏)
大脳白質が老化していた
アルコールはまだしも、スマホを使っているくらいでは、子どもにそこまでの悪影響はないと思うかもしれない。しかし、近年の研究で、スマホなどのデジタル機器を使っているだけで、知能が低下することが判明した。川島氏が続ける。 「仙台市で、15年以上にわたって子どもの追跡調査をしています。その結果から、デジタルデバイスを使い始めた途端に成績が下がることがわかりました。さらに、デジタルデバイスを使う時間が長ければ長いほど、学力は低下していきます。これは家庭での学習時間の長さや、もともとの成績の良し悪しとは関係なく悪い結果が出ています」 この追跡調査では、スマホなどの使用頻度を抑えたり、デジタルデバイスの利用をやめたりすると、成績が上がっていくことも判明したという。 川島氏はさらに、脳の発達をMRIで検査。すると、恐るべきことに、デジタルデバイスを高頻度で使用している子どもは脳の発達そのものが止まってしまうことがわかった。 「毎日のようにスマホなどを使っている子どもは、大脳のおよそ3分の1のエリアで発達そのものが止まっていました。なかでも顕著だったのが、大脳白質の成長低下です。これは、神経細胞の連絡路となっているもので、簡単に言えば脳のネットワークの電線部分。成績が伸び悩んでしまうのも、大脳白質の劣化が原因と見られています」 さらに川島氏は、「スマホがないと不安になる」と語る大学生の脳も検査。すると、20代にしてすでに大脳白質が老化していたという。 「このような学生に、臨床心理士がアンケートや面談で話を聞くと『自尊心が低い』『不安』『抑うつ傾向が強い』といった特徴があり、スマホが脳だけでなく精神面でもマイナスに働いていることがわかります」 実際、アメリカの保健福祉省が出しているデータによれば、1日のSNS利用時間が3時間を超えると、うつ病になるリスクが倍増するという。