東京地裁

　14年前、教え子の女性に性的暴行を加えた罪に問われた元中学校校長の初公判。法廷では、元校長が欲望のなすがままに生徒を陵辱する場面が、生々しく検察官によって読み上げられた。（前後編の前編） 【写真】北村比左嘉被告。校長室で少女たちの動画を収めたビデオカメラを保管していた 　***

現在の仕事は「パートの清掃員」

　北村比左嘉被告（57）は昨年まで東京都の区立中学校で校長を務めていた。だが、今回の事件で逮捕されたことでクビになり、現在は保釈中の身だ。11月20日、東京地方裁判所の法廷にグレーのスーツに青いネクタイをまとって現れ、裁判長から職業を問われると、「パートで清掃員の仕事をしている」と語った。 　問われた罪は、14年前に起こした準強姦致傷とその犯行を自ら撮影した動画を所持していた児童ポルノ所持である。 　動画に残されていたのは、校長として赴任する前の中学校で、2010年6月に教え子A子さんに対して行った暴行だった。2人は部活の顧問と部員の関係だった。 　警視庁が北村被告に対して捜査を開始したのは、別の教え子からの被害申告があったからだった。警視庁が家宅捜索をすると、勤務していた学校の校長室から被害を訴えた教え子だけでなくA子さんへの犯行を記録していたデジタルカメラが発見されたのである。

現在は「妻と2歳の子供と同居中」

　だが、検察がA子さんに対する性的暴行を準強姦罪で問うにはハードルがあった。10年間の公訴時効が成立してしまっていたからだ。そこで検察は時効がまだ成立していない、準強姦致傷罪を適用して起訴した。 　北村被告は児童ポルノ所持については罪を認めたが、A子さんに対する準強姦致傷については「弁護士に説明してもらいます」と言って否認した。 　弁護人は次の3つの主張から強姦致傷は成立しないと訴えた。（1）犯行時A子さんが抗拒不能な状態だったとは言えない（2）そうだったとしても北村被告が抗拒不能だったと認識していたとは言えない（3）ケガを負わせていない。 「被告が運動部の予定表を渡すと、A子さんが都合の良い日に丸をして返してくる」仲だったとも話した。合意の関係だったとの主張だ。 　そして現在、北村被告は妻と2歳の子供と同居生活を送っていると明かし、家族の生活を支えるためにも執行猶予付きの判決が相当と訴えた。 　一方、検察は冒頭陳述で「A子さんが心理的に抵抗するのが困難な状況で性的行為をして、全治1週間の怪我を負わせた」と主張。そして証拠となる動画を開示した。 　傍聴席に向けたモニターには示されなかったが、裁判官と裁判員に向けたモニターには、実際の動画や静止画が映し出された。それは理科教員だった北村被告が「第一理科準備室」にA子さんを呼び寄せ、制服を脱がし、暴行していく一部始終を映した動画だった。