トランプ氏再選で株高続くも米国経済の行方は視界不良 最大の弱点はインフレ、イーロン・マスク氏の政策関与に期待する声も
米国次期大統領にトランプ氏が返り咲くことになったが、それに対するグローバル株式市場の反応は、概ねポジティブであった。トランプ氏の勝利が明らかになった11月6日、NYダウは急騰し最高値を更新、その後もも強い上昇トレンドを維持している。 【写真】トランプ氏を応援するイーロン・マスク氏
ただ、株式市場が好調な一方で、マクロ経済に対する見通しは悲観的なものも目立つ。特に懸念されるのは貿易政策による悪影響だ。トランプ氏は大統領選挙期間中、各国一律で10%、中国に対しては60%の追加輸入関税を課すと発言している。 この懲罰関税が実施された場合の米国経済への影響について、スタンダード&プアーズは11月7日、分析メモを発表している。それによると、各国一律で10%の追加輸入関税が加えられた場合、インフレ率が1.8ポイント上昇し、中国に対する60%の追加輸入関税ではインフレ率は更に1.2ポイント上昇する。前者では米国の生産を1ポイント、後者では0.5ポイント引き下げるショックがある。相手国による報復があればその影響は更に拡大する。 米国経済の悪化は米国債への需要を低下させ、金利を上昇させる。そうなれば米国の償還能力は低下し、金融システムは不安定となる。現在、米国の長期ソブリン格付けはAA+だが、引き下げが必要となるかもしれず、そうなれば米ドルへの信頼が損ねられる。グローバル金融システムへの影響が懸念されるなどと分析している。 貿易政策は景気を押し下げる方に働きそうだが、一方でトランプ氏は景気にポジティブな効果をもたらしそうな政策も打ち出すとしている。トランプ減税の恒久化、法人税の引き下げ、財政支出の拡大、金融緩和、ドル安誘導などだが、こうした政策も物価の上昇要因となりかねない。政策実行により生じるインフレを如何に抑え込むかが大きな課題となりそうだ。 マクロ見通しに不安がある中でも株価が上昇しているわけだが、これは上で示した景気を拡大させる政策、金融を緩和する政策、IT・金融における規制改革などへの期待や、インフレ自体が利上げを伴わない間は株価に有利に働く面もあることなどがより意識されているからだろう。
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