トランプ氏再選で株高続くも米国経済の行方は視界不良 最大の弱点はインフレ、イーロン・マスク氏の政策関与に期待する声も
トランプ氏が進める産業構造改革にマスク氏がどう関与するか
今回の大統領選挙において、各メディアが実施した出口調査によれば「民主主義の在り方」が最大の争点であった。多くの有権者たちが“グローバリゼーションによる教育水準の低い労働者の切り捨て”や、“国家予算の一部が遠い国の戦争に使われ、弱者の生活改善に使われないこと”などに対して強い不満を持ち、トランプ氏の掲げる“アメリカ第一主義”に共感し、「戦争を終わらせる」などの発言を支持したのではなかろうか。そうであれば、既得権益側が大手マスコミを通じてトランプ政権を批判すればするほど、草の根からのトランプ氏への支持は高まり、政治基盤は強化されるだろう。 次期トランプ政権において期待されるのは、実業家・イーロン・マスク氏の政策への積極的な関与ではないか。 今更、マスク氏の業績を紹介するまでもないかもしれないが、1998年にPayPalを創業、電子決済サービスをビジネスとして大きく育て上げたのを出発点として、テスラを通じて電気自動車の製造、スペースXを通じて宇宙開発に参入するなど、数々のニュービジネスに参入し、成功を収めている。AI事業ではOpenAIの設立に参画し、2022年には言論の自由を求めて旧ツイッター(X)を買収している。ビジネスパーソンとしての優れた経営手腕は、トランプ氏が進めようとしている製造業の国内回帰といった産業構造改革を進める上で大きな力になりそうだ。 スペースXが開発する大型宇宙船“スターシップ”は国際宇宙ステーションへの輸送を巡り、大手軍事企業の一角を占めるボーイング社の“スターライナー”と競合している。スペースXとしては、衛星通信事業を大きく発展させたいところだろうが、それには競合する軍事産業などの既得権益側からの圧力を跳ね返す必要がある。有能な弁護士を使い利益相反を防ぎながら政治力を使ってそうした力を削ぐことができれば、宇宙開発事業全体が加速するとともに、間接的に予算配分の硬直性を正すことが可能になるかもしれない。 文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」も発信中。
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