混迷する韓国政局 尹大統領、非常戒厳を宣布から6時間後に解除 野党は弾劾訴追案提出
【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は4日未明(日本時間同)、3日夜に宣布した「非常戒厳」を解除すると表明した。閣議で解除を決定した。尹氏は国会で出席した与野党議員190人全員の賛成で戒厳解除要求決議案が可決されたことを受け、国会などに展開させた軍部隊も撤収させたことを明らかにした。 【図で解説】韓国の非常戒厳、今後の展開は 尹大統領の弾劾可決も 革新系最大野党「共に民主党」など野党6党は4日、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出。6日か7日に採択する方向で手続きを進めるとしている。尹氏の強行措置の「失敗」を受け、尹氏の進退を軸に政局が一気に流動化し、混迷が深まった。 非常戒厳は戒厳令の一つの形態。戦時などの非常事態に大統領が宣言し、市民の権利を制限できる。1980年代初頭以来で、87年の民主化後では初めてとなった戒厳令の宣布は、約6時間で解除された。 国会で多数派を占める共に民主党が尹政権の閣僚らの弾劾訴追案の国会提出を繰り返すなどし、国政運営に支障を来す中、尹氏は戒厳宣布という極端な手段で事態打開を図ろうとしたようだ。 同党は、今回の宣布は「重大な憲法違反だ」とし、尹氏や戒厳を建議したとされる金竜顕(キム・ヨンヒョン)国防相らを内乱罪でも告発する。弾劾訴追案は国会議員の3分の2に当たる200人以上が賛成すれば、可決される。野党側は191議席あり、保守系与党「国民の力」議員の動向が焦点だ。同党の韓東勲(ハン・ドンフン)代表も戒厳には反対の立場を示し、金国防相の解任を求めた。大統領府は4日、大統領府の主要高官が一斉に辞意を表明したと発表した。 尹氏は3日夜、緊急談話で野党側の動きを「内乱を画策する明白な反国家行為だ」と批判し、戒厳司令部を稼働させた。司令部は国会や政党の活動、集会、デモなど一切の政治活動を禁じ、全てのメディアや出版も統制を受けるとする布告令を発表。国会内に軍部隊を展開させていた。