ホンダエコマイレッジチャレンジ2024で見るカーボンニュートラル燃料の今
“1リッターのガソリンで何km走行できるか?”をテーマに、速さではなくマシンの燃費性能を競うのがこのホンダエコマイレッジチャレンジ。1981年の初開催(当時はHondaエコノパワー燃費競技大会)からすでに43回を数え、日本はもとよりタイ、ベトナム、中国などでも開催される競技となっている。この歴史ある燃費競技大会に、今年からCN燃料(『ETS Renewablaze Nihon R100』)を使ったカーボンニュートラル燃料クラスを、中学生~一般、二輪車など全カテゴリーに新設。計57チームがこの新しいカーボンニュートラル燃料クラスに挑戦した。 【画像】ホンダエコマイレッジチャレンジ2024をギャラリーで見る(19枚) 文/Webikeプラス 編集部
そもそもカーボンニュートラル(CN)燃料ってナニ!?
地球環境を壊さずに経済を持続可能な形で発展させられる社会に向けて世界中で様々な取り組みが行われているが、内燃機関でガソリンを燃やして走る車やバイクの分野は、地球温暖化抑制のためのCO2削減の課題に直面している。 “世の中の全ての車を電気で動くEV化する”なんて極論が取り沙汰された時期もあったが、最近になって風向きが変わった。というのも、世の中の車を全てを蓄電したバッテリーで動かす車(BEV)に置き換えようとすると、バッテリー製造に必要なリチウム(Li)資源の埋蔵量が足りず、必要数の1/4程度しかBEV化できないことがわかってきたためだ。 世界の全ての車のBEV化することは難しいとはいえ、持続可能な社会のためにはCO2削減は必須である。内燃機関であるかぎり“CO2を出さないことはなかなか難しいものの、これ以上増やさないため”の取り組みとして注目を集めているのがカーボンニュートラル燃料(以下:CN燃料)だ。 二輪・四輪レース業界ではCN燃料の採用が進んでおり、MotoGPが2027年までにCN燃料への移行を発表したほか、日本レース界ではいち早くCN燃料を採用。2023年から全日本ロードレース選手権・JSB1000では、全車共通のCN燃料を使ってのレースがスタートしている。 ひと口にCN燃料と言っても、いくつか種類がある。①“再生エネルギーで作られた電気”使って大気中のCO2を化学反応で取り込んで作るCN燃料。②サトウキビの搾りかすなどバイオ由来のエタノールを変化させてガソリンの主要成分を得るCN燃料……など。 今回の記事で紹介する二輪レース業界で採用されているCN燃料は、②のバイオ由来のエタノールを変化させてガソリンの主要成分を得るCN燃料の方である。 『ETS Renewablaze Nihon R100』は、CN燃料でありながらレース用燃料として高圧縮比エンジンでの使用を前提として開発されている。ちなみにオクタン価はハイオクガソリンより高いRON:101.4、MON:88.6と、高回転側(RON)も低回転側(MON)もノッキングしにくいように成分調合されているのが特徴だ。また『ETS Renewablaze Nihon R100』は、国内の日本産業規格であるJIS規格におけるガソリンの要件を満たしている。 ちなみに価格は上の写真のペール缶(10ℓ)で1万4,850円で、リッター当たり約1,500円。レース用燃料と考えれば普通かもしれないが、一般的な化石由来のガソリンと比べるとその価格の高さが気になるところだ。 カーボンニュートラルクラスにCN燃料を提供するハルターマン・カーレス・ジャパン合同会社の川本氏は、『ETS Renewablaze Nihon R100』と通常の化石由来のガソリンの違いについて、「私どもが提供するのはCN燃料のなかでもETG(Ethanol TO Gasoline)と呼ばれるもので、木材や生ゴミ、廃プラスチックといったものからエタノールを作り、それをガソリンへと改質した燃料になります。『ETS Renewablaze Nihon R100』は、JIS規格を取得したわけですが、JIS規格の中でも品質の幅があり、通常のガソリンがかなり揮発しやすいのに対し、『ETS Renewablaze Nihon R100』は低温時の揮発性がやや悪いという特徴を持ってます。 レース用のCN燃料である『ETS Renewablaze Nihon R100』を作る際に頂いた条件として ①バイオ由来(100%非化石由来)のCN燃料であること ②JIS規格に適合し、ガソリンと混ぜても使えること ③なるべく価格を抑えること の3つがあります。ただ、JIS規格は化石燃料由来のガソリンをベースとして作られており、バイオ由来の燃料でその規格に合わせるとなるとどうしてもどこかに無理が生じます。結果、この3つの条件を整えるとやや低温下では揮発しにくい燃料となり、揮発しなかったガソリンがオイルと混ざるダイリューション(希薄化)も起きやすくなっています。当社としては、R50というCN50%の燃料も作っていますが、そちらはまさに低温時の揮発性やダイリューションに対応した燃料となっています」と語る。 さて、このCN燃料。近い将来、我々のバイクライフに大きく関わってくるものになるのか? そうでないのか? 既存の化石燃料由来のガソリンに比べて値段が随分と高いだけに気になるところだ。