「GC注記」「重要事象」記載の上場企業67社 減少が鮮明 コロナ禍から約3割減
赤字常態化の本業不振が約8割
GC注記・重要事象を記載した67社を理由別に分類した。51社(構成比76.1%)が重要・継続的な売上減や損失計上、営業キャッシュ・フローのマイナスなどの「本業不振」を理由としている。売上減少や採算性の低迷から、赤字経営が常態化している企業が目立った。 次いで、「資金繰り悪化・調達難」を理由としたのが11社(同16.4%)、「借入過多・財務悪化」が10社(同14.9%)、「財務制限条項に抵触」が5社(同7.4%)と続く。 また、債務超過の企業は2社(個別決算含む)で、前年度本決算の4社から2社減少した。債務超過は上場廃止基準にも抵触するため、利益確保や増資などによる早急な資本増強策が求められる。 ※重複記載のため、構成比合計は100%とならない
「新型コロナ影響あり」は4社に減少
新型コロナによる影響を要因の一つに挙げた企業は前年度本決算の5社から1社減少し、4社にとどまった。 「新型コロナ影響あり」の企業数はピークの2021年3月期は46社だったが、その後、徐々に減少している。特に、5類に移行した2023年以降は減少幅が大きく、コロナ禍の悪影響が徐々に後退し、業績回復に繋がった企業が多い。 4社のうち製造が2社、サービスが1社、陸運業が1社と分散し、いずれも重要事象を記載した。
製造業が最多の4割
GC注記・重要事象を記載した67社の業種別では、製造業が29社(構成比43.2%)と最多で4割を占めた。電気機器などの機械製品、食料品、化学、医薬品など扱い品は多岐にわたるが中堅、新興のメーカーが多い点が特徴。 以下、小売業が11社(同16.4%)、サービス業と情報・通信業が同数の9社(同13.4%)、建設業が3社(同4.4%)、証券・商品先物が2社(同2.9%)と続く。 母数が多い製造業のほか、小売業とサービス業と情報・通信業が全体を押し上げ、上位4業種で58社(同86.5%)にのぼった。
東証スタンダードが6割超え
上場区分別では、東証スタンダードが44社(構成比65.6%)で最多。以下、東証グロースが17社(同25.3%)、東証プライムが4社(同5.9%)と続く。このほか、名証や札証の地方上場企業が2社だった。 上場企業のなかでも中堅クラスが集中する東証スタンダード上場が6割を超えた。実績があり、名門とされながらも不振続きの中堅企業や、業歴が浅く経営基盤が定まらない新興勢などが多数を占めている。 ◇ ◇ ◇ GC注記・重要事象の記載企業は5年ぶりに70社を下回った。コロナ禍の影響を一足早く解消した企業の業績回復が背景にある。 一方、事業好転の見通しが立たず、赤字が常態化している企業や、コスト高などの新たな事業環境の悪化に伴い、急速に業績不振に陥った企業も散見される。 11月27日に民事再生法の適用を申請した日本電解(株)は、前年度本決算の発表時点では重要事象の記載にとどまっていたが、その後、赤字拡大や借入返済が困難である点を理由に、同決算にGC注記を追記。経営悪化の深刻度が増し、警戒感が強まっていた。 上場企業でも、好調を維持する大手と不振が続く企業との二極化が進むなかで、GC注記・重要事象の記載状況は経営状況の変動を知らせるサインとして、引き続き注視する必要がある。