三部作など生んだ晩年の地 東京・新宿区立漱石山房記念館 現着しました!
部屋の広さの特定には格別の苦労があったようだ。資料によって8畳であったり10畳であったり判然としなかったが、「決め手となったのは、客間の写真に写っていた1枚の油絵」だと嘉山さん。
その絵は洋画家、安井曽太郎の「麓の町」。絵の寸法と、昭和3年に撮影された写真に写る絵のサイズを比較検討した結果、書斎・客間とも10畳あったと割り出された。
■受け継がれる記憶
記念館には文学愛好家のほか、海外からの観光客、翻訳者なども訪れる。
ミュージアムショップでは今年、42歳当時の漱石の写真をプリントしたアクリルスタンド(税込み800円)を発売した。「推し活」グッズの定番として知られるが、若い「文学女子」をはじめ、漱石愛好者に人気という。館内には、SNS投稿などができるよう、書斎をモチーフにした撮影セットもある。
文豪は、自身が後世、アクスタになっているとは想像もしなかったであろう。生前、木曜会に文士がつどったように、令和の今もこの地には漱石を慕う人々が集まり、記録・記憶を受け継いでいる。(黒田悠希)
記念館は午前10時~午後6時(入館は午後5時半まで)。通常展の観覧料は一般300円、小・中学生100円。休館は月曜と12月29日~1月3日など。