灘高と甲南女子大がコラボした「性教育」講座後に起きた「バカとエロの大縄跳び」の背景
男性がエロとバカで盛り上がる悲しすぎる背景
男性のあいだで「バカとエロの大縄跳び」が生じるメカニズムについては学術的な説明がすでになされています。 男性優位の競争社会では、学業やスポーツといったフォーマルな競争で成果を出せない男性が反学校的な非行文化すなわち“バカ”を演じることによって自己顕示する傾向があります。また “エロ”を強調することは自分が異性愛者の男であるアピールとして機能します。 これはいわゆる「男らしさ」にまつわるジェンダーの問題です。自分の男性性に不全感を抱いている男性ほど、バカとエロの大縄跳びから抜け出せないということです。 不全感を解消するには、2つの方法が考えられます。1つは、自分が“男のなかの男”だと証明することです。学業やスポーツあるいは仕事において競争に勝ち続け、なおかつ実際に女性からモテて、かつそのことを対外的にアピールすることです。もう1つは、そういうものを“男のなかの男”だとする偏ったジェンダー観から抜け出すことです。 前者を選択して目的を達成できるのはごく一部の“勝ち組”男性のみです。社会を変えるには、後者を選択すべきであることは言うまでもありません。そのために、男子校の教員たちは「男らしさ」のくびきから生徒たちを解放しようと、あの手この手を尽くしているのです。 なお、イギリスの学校における男女の振る舞いの違いに注目して著された『男の子は泣かない』という本によれば、男子同士のこのような地位競争は男子校において顕著であるとのこと。 共学校では日常的に女子との差異によって自分の男性性を確認できるのに対して、男子校では男性同士の間で自分の男性性を確認しなければいけないからです。共学校ではバカとエロの大縄跳びが表面化しにくい反面、むしろ女子の存在自体が男性に優越感を与えている可能性が指摘されています。
国際的な学力調査で示された男子の学力低下傾向
ジェンダー的な是非は別として、学力向上という意味では男子校や女子校に利点がありそうだと示す国際的なデータは枚挙にいとまがありません。「男の子問題(The Boy Crisis / The Trouble with Boys)」という言葉も国際的に知られています。世界的に男子の学力低下が問題と認識されているのです。 OECD(経済協力開発機構)が3年ごとに行う国際的な学力調査PISAの平均では、女子の成績が男子の成績を常に大幅に上回っています。特に「読解力」についてはOECDに加盟するすべての国と地域で常に女子の成績が男子を上回っています。一方で、OECDは、男女の学力に生来的な差はないとしています。 では何がこの差を生んでいるのか? いまの学校環境が多くの男子には合っていないのではないかという指摘があります。最近、そのようなテーマで印象的な動画を見たので、概要を紹介します。 TEDという世界的に有名な教養系の動画サイトで、リチャード・リーヴスという社会流動性の研究者による「男子と男性の教育危機をどう解決するか(How to solve the educationcrisis for boys and men)」というプレゼンテーションが公開されていました。 さまざまなデータから、現在の学校システムが多くの男子に適していない可能性を指摘します。一因として男性教員の不足を訴えています。 また思春期には男子の心身の発達が女子よりも平均して1年ほど遅れることを根拠にして、男子の就学年齢を女子よりも1年遅らせるべきだという大胆な解決策を提案しました。であるならば、1年遅らせる代わりに男子校という選択もありではないかという気がします。