灘高と甲南女子大がコラボした「性教育」講座後に起きた「バカとエロの大縄跳び」の背景
大人たちに性教育が足りていないことが可視化された
これらの書き込みをしたひとが本当に男性ばかりなのかどうかはわからないのですが、少なくとも見た目には、女性蔑視と学歴コンプレックスにまみれた、いかにもホモソーシャルな盛り上がりといって差し支えはないでしょう。 当人たちはウケ狙いなのでしょうが実際にはなにも面白くなかったために、記事の内容よりもコメント欄やSNSの書き込みが悪目立ちして、各種メディアで大きく取り上げられる事態に発展しました。 たとえば「女子SPA!」の見出しは「超エリート灘高生が女子大生と学ぶ性教育を、ネットで“合コン”と揶揄。背景に『男子校への偏見』か」です。以下は、この記事に掲載された私のコメントです。 「男子校の中も女子大の中も、いまどきの性教育も、どれも実際に見たことがない人が多いので、妄想が3乗ぐらいになってふくらんじゃったのでしょう」 「子どもたちがこんな授業をしていると知るやいなや、幼稚なところがあぶり出された大人がいる。その人のなかにある思い込みや、気づいてないことが可視化されたってことですよね。だからどんな反応でも、うれしく読みましたよ」 私も緊急生出演した「ABEMAヒルズ」というネットのテレビ番組の内容をまとめた「ABEMA TIMES」の記事タイトルは「『灘校生と合コンできて甲南女子大生はウキウキだろうな』…灘×甲南女子の性教育議論への揶揄はエリートへの嫉妬? 教育ジャーナリスト『逆接的にこういう教育の必要性が強調された』」でした。
ネットのコメント欄の分析を宿題にした男子校も
灘のこの記事に限らず、ほかの連載記事についても毎回多かれ少なかれなんらかの揶揄するようなコメントがつきました。女性の講師や教員が性やジェンダーについて授業を行うことに、「フェミニスト」や「洗脳教育」とレッテルを貼る書き込みもありました。 授業では、男子生徒たちが内面化してしまいがちな「有害な男らしさ」と呼ばれるたぐいのジェンダー・バイアスを自覚させ、そのままでは苦しいから早くそこから抜け出してほしいというメッセージを発しているのに、男子生徒たちのジェンダー・バイアスを糾弾しているかのようにとらえてコメントしているひとたちも散見されました。 女子大学生や女子高生が男子中高生に性やジェンダーについて語ることに対しても、「女である自分たちにもっと気をつかえ」とプレッシャーをかけられているように感じた読者もいたようです。 「男」と「女」という概念を対立的にとらえており、女性の権利を認めることがすなわち自らの権利を手放すことにつながるのではないかという恐怖に囚われているように見えます。自分を含めた「男」という概念が攻撃されていると勝手に感じとって、つい反論・批判してしまうのでしょう。 なかには「コメント欄をぜんぶ読んで、なんでこうなるのか考えること」を宿題にした学校もありました。ある教員は「こういうことを当事者として経験するのは初めてだったので、たいへん勉強になりました」と言っていました。 男子校を揶揄する書き込みを男子校関係者が書くことは考えにくい。ではどんなひとがどんな気持ちで「バカとエロの大縄跳び」のような書き込みをするのかに、俄然興味が湧きました。