〈日本初のカジノ・大阪IRの問題点〉大阪府市が目論む年間1060億円の収入増は、ギャンブル客の負けた金…オリックスのIR事業参画へも批判の声
オリックスも中核企業の1つ
ここから大阪IRの概要をつかんでいこう。2022年4月に府市と大阪IR株式会社によってつくられた「大阪・夢洲地区特定複合観光施設区域の整備に関する計画」(2023年9月と2024年4月に一部修正)をめくっていく。 この整備計画から主要素を抜き出して、整理・作成したのが、下の表だ。適宜、参照しながら読み進めていただきたい。 まずはIR事業者となる「大阪IR株式会社」を成す出資者から。日本MGMリゾーツとオリックスが約41%ずつを担う中核株主で、残り約17%は少数株主が持つ。関西企業(JR西日本・近鉄・京阪・南海など)を中心とする22社がこれにあたる。 日本MGMリゾーツは、米国のMGM社の子会社だ。同社のプレスリリース(2023年4月)によると、日本のIR市場への参入を目指し、MGM社が2014年9月に設立。東京に続き、2019年1月には大阪市北区中之島に拠点を構えている。 なお一時期、日米外交筋での著名人物が日本MGMリゾーツの社長を務めていた。外交官として活躍し、2017年にキャロライン・ケネディ駐日米国大使から引き継いで臨時代理大使となったこともあるジェイソン・ハイランド氏だ。同氏が2019年に出版した『IRで日本が変わる』を読むと、IR推進派の論理がつかめる。 では、親会社の米MGM社は、どんな会社だろうか。同じリリースだと、同社は米国の代表的な株価指数の1つ「S&P500」の構成銘柄。IRを世界で開発・運営し、31のユニークなリゾートブランドを展開している。 コロナ禍で米MGM社は大打撃を受けたが、整備計画によると、それでも「潤沢な手元流動性(2021年9月末時点の手元流動性は約64億ドル)を有する」。さらに「資金拠出が主に想定される2022年から2025年までの間においても十分なフリーキャッシュ・フローを創出できる事業計画を有して」いる。 相方となるオリックスは、プロ野球チームを所有していることで知名度が高い。大阪発祥で関西国際空港や大阪国際空港(伊丹空港)、神戸空港、京セラドームなどの運営もしている。 レンタカー会社として認識している読者もいるだろう。整備計画によると、2021年9月末時点の手元流動性は約1兆737億円。オリックスもまた、出資金の約41%にあたる約3060億円を十分に賄えると評価されている。 ただし、プロ野球チームを有する企業が、IR事業に参画することへの批判の声も上がっている。しかも、オリックスは2023年シーズンにおいてパ・リーグ3連覇を果たし、人気も上昇中だ。 IRを成り立たせるのはカジノ、ようは来場者がギャンブルで負けたお金。他方、プロ野球選手はファンの子どもたちのあこがれとなり、大人にも元気を与える。カジノとプロ野球は、いかにも組み合わせが悪い。 批判の声の一例を挙げてみる。ギャンブル依存症相談などに乗っている「大阪いちょうの会」は2020年3月、「オリックスはカジノ賭博事業から撤退せよ」と題する決議文書を定期総会の場で公表した。そこでは、オリックス・バファローズの以下の球団理念を「素晴らしい」と紹介している。 オリックス・バファローズは、 野球で、ファンに〝感動〟と〝興奮〟を届けます。 野球で、こどもたちの〝夢〟と〝希望〟を育みます。 野球で、地域社会の〝街づくり〟と〝人づくり〟に貢献します。 野球の力で。 そして、その後、「球団理念とカジノ賭博事業とは絶対に相容れないものである」と指摘。理由として「カジノ賭博にはギャンブル依存症の発生、教育、風俗環境の悪化、多重債務問題、暴力団の暗躍、マネーロンダリング、犯罪の助長などが必須である。 こどもたちの〝夢〟と〝希望〟を育むプロ野球とカジノ賭博は正反対に位置するものである」と意見を述べている。