ラグビー日本代表が敵地仏をブーイングに包んだ引き分けをどう評価すべきか
試合前にはスモークやライトが渦巻いた屋根付きのスタジアム。ブーイングのボリュームが上がったのは、後半33分だった。 日本代表が、プロップのヴァル アサエリ愛のトライで23-23と同点に追いつきスタンドオフの田村優がコンバージョンを狙う。それまではゴールキック時には騒がないという楕円球界の常識を重んじるファンが多かったようだが、ホームのフランス代表の危機を前に声量が変わったか。 この1本を、田村は外した。 4年に1度のワールドカップ(W杯)日本大会を2年後に控えるラグビー日本代表は、現地時間11月25日、敵地ナンテールのUアリーナでW杯準優勝3回のフランス代表と対戦、そのまま23-23で引き分けた。 この秋のテストマッチの戦績は3戦で1勝1敗1分となった。11月4日のオーストラリア代表戦は序盤に勝負をつけられ30-63と完敗したのち、渡仏後の18日には、代表デビュー組の多かったトンガ代表を39-6で制した。そして今回、過去の対戦成績が9戦全敗と歯が立たなかった強豪に最後まで食らいついた。喜んだファンも多かったろう。 しかし、この善戦は、素直には受け取れない。 フランス代表は自信を失っていた。 フランス代表は、5連敗中。直近にはニュージーランド代表、南アフリカ代表に連敗と苦しんでいた。この日もミスが多く、ギ・ノヴェス監督曰く「自信を喪失している」。公式発表で「23000人」の観衆から多くの野次を浴びる結果に。 フッカーのギエム・ギラドは報道陣から「ファンがチケット代を返せと叫んでいるが」と聞かれる始末だ。闘将は声を落とし、こう応じた。 「気持ちはわかります。申し訳ないと思っている。サポーターがここへ来るまでにいろんな努力をしているのはわかっているので」 むしろ日本代表としては、手負いのトリコロール軍団の“首を絞め落とせなかった”格好なのだ。フランス代表と同じく、要所での反則やミスに泣いていた。 特に終盤には、スクラム、空中戦のラインアウトといった攻防の起点(セットプレー)でため息を誘った。 2点を追っていた後半28分には、自陣でのスクラムを崩す。フランス代表のペナルティーゴールで18―23と点差を広げられた。さらに23-23の同点で迎えた後半終了間際には、中盤左でのラインアウトを乱すなどし、追加点を挙げられなかった。 クライマックスのセットプレーを確保しきれなかった背景には、当日のメンバー編成、それに伴うベンチワークがあったか。