ラグビー日本代表が敵地仏をブーイングに包んだ引き分けをどう評価すべきか
この日、ラインアウトの跳躍やスクラムの押し合いで肝となるロックのポジションに、フランス代表は2メートル超の2名をスターターで起用。それに対し日本代表は、フォワード8人中190センチ以上のスタメンがわずか1名という陣容で臨んでいた。 しかも南アフリカ出身で身長188センチのヴィンピー・ファンデルヴァルト、ワールドカップ経験者で192センチの真壁伸弥という2人の先発ロックを、後半21分に退けていた。代わって投入されたのは、いずれもフランカー、ナンバーエイトといった別なポジションの選手だった。 2年前にトンプソン ルークが代表引退(今年6月には限定復帰)したことなどを受け、就任2年目のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)はロックの人材難に悩んでいると強調。今回の遠征メンバーには190センチの谷田部洸太郎というロックもいたが、フランス代表戦のリザーブにはロックが入っていなかった。 ちなみにこの日のグラウンドは、テストマッチの会場には珍しい人工芝。地面へのスパイクのかかりが極端に強かった。日本の大学チームなどの練習場ではよく人工芝が使われているとあって、戦前から「日本代表に優位では」との論調も上がったが、事実、モール防御などの地上戦では、日本代表は十分に牙をむいた。 それだけに専門家不在で臨んだ空中戦の失敗は痛かった。試合中にフランカーからロックに移った身長187センチの姫野和樹は、難儀したラインアウトについてこう話す。 「苦しい場面もありました。わざと(自軍が捕球できそうな)スペースを見せて僕たちがそこへ行った時に(圧力を)かけて来られたりと、相手の駆け引きがうまかった」 日本にいる海外出身ロックの代表資格(国内居住3年以上)取得を心待ちにするジョセフHCは、この日のロック不在、および、それに伴うセットプレーでの苦しさについてはこう見解を示すのみだった。 「ロックに怪我人が出た。身長の足りないルースフォワード(3列目)の選手がロックをやったわけですが、懸命に戦ってくれたことは嬉しい」 とにかく両軍とも「自滅」と振り返りたくなる80分だったか。