S&P500投信「本当のコスト」独自計算【今期最安はコレ】eMAXIS Slim、楽天・プラス、野村はじめてのNISA対決
次に、運用報告書で気になる点を質問した。まず、総経費率内「その他コスト」の「保管費用」について。eMAXIS Slimは楽天・プラスより若干高めだが、その理由は? ※保管費用…ファンドが保有する外貨建て資産を管理するコスト。主に「売買の都度、1銘柄ごとに発生する費用」と「保管のために残高全体にかかる費用」があり、保管銀行へ支払う。 「他社比で大きく劣後しているととらえてはいませんが、一つの要因としては今期の資金流入が大きかったためです。マザーファンド(実際に株式などを売買する箱のようなもの)の規模が23年2月~24年2月で2兆534億円と約2倍に増えています。この資金で株式を購入するなどのコストがかかりました」(三菱UFJアセット) ■新規設定のコスト高 次に総経費率の合計は、はじめてのNISA・米国株式が一番高い。この理由は? 「はじめてのNISAは今期が1期目です。マザーファンドを新規設定した場合、総経費率の中でも『保管費用』が高くなる傾向があります。マザーファンドの残高に対して100%に近い株式を買い付ける必要があるため、その『売買の都度、1銘柄ごとに発生する費用』が大きくなります。2期目以降、この項目は低下していくことが期待されます」(野村アセット) はじめてのNISAの設定時には野村アセットのシードマネー(自己資金)を入れているため、設定時に発生する保管費用の大部分は野村が負担する形になっている。大手の余裕。保管費用はマザーファンドが大きくなるほど低くなる傾向。今後、残高が増えれば安くなりそうだ。 新NISAで一番人気なのは「全世界株式」だが、ここ最近はS&P500の純流入が増えている。販売会社の立場から、SBI証券経営企画部の粟津優香さんに投資家動向を聞いた。「積み立て設定金額は、相変わらず全世界株式が人気です。ただ当社では11月のeMAXIS Slim全世界株式のスポット買いが前月比2%増に対しS&P500は23%増。積み立て設定に大きな変化がない中でスポット買いが増加傾向です」 投資信託の「商品」としては「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が人気だが、指数としてはS&P500が人気だという。 「新NISAつみたて投資枠対象の投資信託の純資産総額を集計すると、S&P500(全米株式含む)の投資信託は合計約11兆円。全世界株式(MSCI ACWI)は合計約7兆円。先進国株式(MSCIコクサイ)は合計約4兆円です」 なるほど。米国株の投資信託は「SBI・V・S&P500」(純資産総額約2兆円)や「楽天・全米株式」(同/約1.8兆円)など巨大なものが多い。商品では「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が新NISAの人気トップだが、指数で見ると米国株式が人気、と。納得した。(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子) ※AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号
向井翔太,中島晶子