辛口コラムニストが選ぶ2024年「ドラマ総まくり」 ワースト1位がまさかの「虎に翼」になった“深い理由”
ベスト1「ふてほど」との違い
林:いや、本当のところ、ベスト1とした「不適切にもほどがある!」との間で悩んだのよ。両方とも2024年の連ドラのトップであることは固まっていたんだけれど、どっちをベストにしてどっちをワーストにするかが最後まで決まらなくて。 アナ::そうか。ベスト1の発表のとき「ふふふふふ」なんて不気味に笑って、「不適切」を選んだ理由を誤魔化していたのは、そういう事情があったからなんですね。ではなぜ、「不適切」がベスト1で「虎に翼」がワースト1という結果に? 林:迷いに迷ったときに考えたんだわ、1年後、5年後、あるいは10年後にもう一度見返したいと思うのはどっちかなと。 アナ::1年後、5年後、10年後にまた見たくなるか……ですか。なんだかわかる気がします。私の同級生に日本史の研究者がいるんですが、彼は「“プロ”になってから小学生のころに好きだった歴史漫画は読み返すけれど、中高生時代のテキストは開いたことがない」と言っていました――今は教科書をつくる立場なのに。
教科書的ドラマ
林:それそれ、ワタシにとっての「不適切にもほどがある!」と「虎と翼」がまさにそれ。「虎と翼」は司法修習生の研修テキストみたいな骨組みを実に見事にドラマへと肉付けしてあって、吉田恵里香は眼を離せない脚本家になったけれど、最終話まで見終えて振り返ってみると、ドラマ仕立ての教科書でもあったなぁと。 アナ::確かに。 林:「虎に翼」の原型、実はEテレの「昔話法廷」(2015~22年)だったんじゃないかと、ちょっと疑ってます。 アナ::「カチカチ山」や「ブレーメンの音楽隊」の登場人物たちが――いや、ヒト以外のあれこれも含め――傷害罪や誘拐罪の容疑で法廷に立たされ裁かれる教育番組ですね。なぜかグッドデザイン賞まで受けるほど評価が高い。 林:豪華な顔ぶれまで含め、役者さんたちが芝居をしていて、でも、ドラマかと問われればドラマではなく、教育番組でしょ。似たようなことが程度の差こそあれ「虎に翼」についても言えて、放送期間中にワタシが勝手につけていたタイトルは「過適切にもほどがある?」でした。 アナ::言い得て妙……ではありますね。 林:その点、「不適切にもほどがある!」のほうは、これがドラマかドラマでないのかと悩む人は、まぁいないでしょ。毎回、ラストがミュージカルになるあたりまで含め、ドラマすぎるぐらいドラマだもの。 アナ::それもわかります。