辛口コラムニストが選ぶ2024年「ドラマ総まくり」 ワースト1位がまさかの「虎に翼」になった“深い理由”
意外に多いオーケストラもの
アナ::どちらも人気作となりましたね。タイトルは頻繁に口にしたくなるタイプではありませんが。 林:どちらも作品としては見てる間に他の映画や小説などがあれこれ頭に浮かんでくるタイプのドラマで、あんまり落ち着かなかったけどね。「さよならマエストロ」なんて映画に限っても「俺たちの交響楽」に始まり、「異動辞令は音楽隊!」「マエストロ!」「オーケストラ!」「オケ老人!」のビックリマーク4部作に、「オーケストラの少女」「ラストコンサート」あたりまでが思い出されて、もう何がなんだか。 アナ::言われてみると多いんですね、オーケストラもの、楽隊ものって。 林:そう。で、ひとつの目標に向かって進むなかでの群像劇が基本となって、そこに主人公たちの狭い物語――たいていは挫折なんだ、これが――が絡んでくるというパターンになりがちだから、バリエーションが少ないのよ。「さよならマエストロ」の場合、脚本の大島里美が過去のオケものをよく研究したからこそ話がうまく膨らんで、見る人によってはなんだかあれこれがつながっちゃうドラマになったけど、それは失敗じゃなく成功でした。
ワースト2に話題作
アナ::2024年の連ドラ・ワースト3、発表を続けましょう。 林:了解。ワースト第2位は…… ▼「アンメット―ある脳外科医の日記―」【フジ系・カンテレ制作/月曜22時/4月期】 ▼「ライオンの隠れ家」【TBS系/金曜22時/10月期】 ▼「海に眠るダイヤモンド」【TBS系/日曜21時/10月期】 ……の3本です。 アナ::あれ。去年までだったらベストのほうに挙げそうな作品ばかりですね。 林:そうなのよ。「ホン・ヒト・シゴト」の三拍子が揃って、嫌にならずに見続けられた希有な良作。正直なところ、「アンメット」はヒト(配役)にやや難ありで、ことに助演陣が薄いな、安いなと感じることがあったたけれど、「ライオン」と「ダイヤモンド」は主演から脇までがドリームチームに近い。ありきたりじゃないホンも含めて、エエもん見せてもらいました感が強かった。 アナ::それがなぜ、今回はワースト3のほうに? 「アンメット」なんて、失敗作が多いと林さんが嘆く関西テレビ制作枠のドラマで、ここにいい作品が出ると年間ベストに入れてくるというのが定番の選考でしたが。