明治完封、PK成功、それでも届かず涙…筑波大主将DF福井啓太は“RB変革元年”大宮帰還へ「自分が中心になってやっていく気持ちで」
[12.22 インカレ準々決勝 筑波大 0-0(PK4-5) 明治大 さくらスタジアム] 【写真】「イケメン揃い」「遺伝子を感じる」長友佑都の妻・平愛梨さんが家族写真を公開 リーグ戦と天皇杯を通じて1勝1分1敗で迎えた宿敵・明治大とのインカレ最終決戦、勝利の女神が筑波大に微笑むことはなかった。120分間の延長戦を経ても0-0のまま決着がつかず、PK戦で4-5の敗戦。試合後、主将のDF福井啓太(4年=大宮U18/大宮内定)は「悔しいに尽きる。いい試合をしたからこそ、俺たちの全部を出したからこそ、負けたのが本当に悔しい」と心境を語った。 5月26日の天皇杯1回戦は1-0勝利、6月15日のリーグ戦ホームゲームは2-2の引き分け、8月3日のリーグ戦ホームゲームは0-2敗戦。福井は準々決勝の相手が明治大に決まったグループリーグ終了後、「明治にはこの1年間、いろんな戦いをして1勝1分1敗で来ているので、ここでどっちが本当に強いのかが決まる試合」と並ならぬ覚悟を口にしていた。 それから4日後、福井はピッチ上でその言葉にふさわしいパフォーマンスを見せた。相手は大型ボランチのMF島野怜(3年=仙台育英高)を最前線で起用するという奇策に出てきた上、前半は風下で苦しい展開を強いられたが、島野に入ってくるボールをうまくケアしつつ、シャドーのMF熊取谷一星(4年=浜松開誠館高/東京V内定)とFW中村草太(4年=前橋育英高/広島内定)にも冷静に対処。今大会わずか1失点の堅守をビッグマッチでも継続してみせた。 風上に転じた後半12分にはビルドアップのミスからボールを奪われ、MF藤森颯太(3年=青森山田高)に決定的なシュートを放たれるという大ピンチもあったが、ここはGK佐藤瑠星(3年=大津高)のビッグセーブで難局を脱出。すると直後、中村の突破を福井が個人で止め、スタンドの応援団を大きく煽った。 直前のミスにも揺るがないビッグプレーは、さすが主将というべき振る舞い。「自分が一つのミス、チームのミスで崩れていたら良くない方向に進んでしまう。どんなプレーをしようとすぐに切り替えて、自分のプレーに集中しようというのはこの1年間ずっと気をつけてきた」。たゆまぬ積み重ねを大きく印象付けるシーンだった。 「キャプテンという立場の責任はもちろんあるけど、その中でもまずは自分のプレーで引っ張るぞという強い気持ちを持っていました。ピッチの中では自分が最後の壁になったり、攻撃では最初のスタートになることを常に意識しながらやっていて、それをすることで自信も必然的についてきた。そしてピッチ外でチームのことを第一に考えて行動していくうちに、自分自身が変われたなと思います」(福井) 名門・筑波大の主将という重圧は、ただでさえのしかかるものだが、キャプテンシーを真に発揮できるのはピッチに立ってこそ。この日、福井がその覚悟どおりのパフォーマンスを見せ、120分間の死闘を無失点でくぐり抜けた。 また福井のメンタリティーは続くPK戦でも表れた。自身はグループリーグ大阪体育大戦(△0-0)の後半、勝ち越しのチャンスでGKに止められていたが、この日は負けたら終わりの5人目キッカーとして登場し、「実際はめちゃめちゃ緊張した」という中で成功。「(相手GKの)上林選手の1人目から4人目までの癖や、動く速さを見て、真ん中だったら行けるという強い気持ちで蹴った」という冷静な駆け引きが光った。 しかしながら、次のステージにはあと一歩届かなかった。「お互いにチャンスがある中、決め切るところ、最後の最後でちょっと触れば点が入るという紙一重のところで決め切れなかった。それがPKでも出てしまった。最後は気持ちのところになってしまうと思う」。細部に宿った違いを悔やむしかなかった。 それでも筑波大の主将を背負った重圧と経験、ハイレベルなポジション争いと向き合った苦悩や実績は次のステージに活かすしかない。 「今年はサッカー選手としても、一人の人間としても本当に成長できたと実感しています。それはプロの世界に入ってからも絶対に活きてくると思うし、キャプテンという立場をして良かったなと思える1年だったと思います」。福井は来季、アカデミー時代を過ごした大宮アルディージャでプロ生活をスタートさせる。 大宮は今季、J3リーグを優勝し、来季は2年ぶりにJ2リーグで戦うことが決定。またレッドブル社の買収によってRB大宮アルディージャとして生まれ変わることも決まっており、福井のプロ1年目はクラブの“変革元年”としても注目を集めるシーズンになりそうだ。 「クラブとしても来年の1年間は大きな変化を迎える1年になるし、自分は9年間大宮に育てられて、大宮への思い、愛は人一倍ある。そしてこの筑波での4年間を踏まえて、大宮に対して自分が中心になってやっていくくらいの気持ちで1年目からやっていきたい」(福井) 筑波大で培ったリーダーシップも稀有な能力だが、まずはプロサッカー選手としてピッチに立てるかどうかが大事な勝負。「大学卒のプロ1年目というのは本当に大事だと思うし、その1年間で上に行くか下に行くか決まるくらいの覚悟を持っている。来年1年間はとにかく結果を意識してやっていきたい」。支えとなるのは大きな覚悟と、筑波で積み重ねた自負。そして大学最後の1年で味わった大きな悔しさも胸に、新たなスタートを切る。