『ガールズ&パンツァー』で話題となったクリスティー式はアメリカ軍の英雄・パットン将軍も大絶賛!! しかし制式採用の前に世界恐慌が立ち塞がる!
2023年10月の上映から大きな話題を呼んだ『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話にて、継続高校のフラッグ車として活躍するのがフィンランド製の自走砲BT-42突撃砲だ。この戦車に採用された「クリスティー式サスペンション」は、優れた悪路走破性に加え被弾による損傷にも強く、履帯を外した状態で車輪走行が可能という特徴を持つ。この戦車の原型となったのが、アメリカの自動車技術者のジョン・W・クリスティーが発明した「クリスティー戦車」だった。「クリスティー式サスペンション開発秘話」今回は1932年4月にバージニア州フォート・マイヤー駐屯地で開催されたT1のデモンストレーションの様子を視察に訪れたジョージ・S・パットン少佐の目線で紹介しよう。 【画像】米陸軍でもクリスティー式を採用した戦車は高く評価されたが……
M1928を全面改良したM1931の実戦部隊での運用試験は1931年春に始まる
M1928の設計を全面的に改め、優れた走行性能はそのままに37mm戦車砲の搭載を考慮した旋回砲塔、避弾経始に優れた車体正面の傾斜装甲などの新機軸を取り入れた本格的な戦車としてクリスティーのM1931は1931年1月に誕生した。 1931年3月から2ヶ月間に及ぶアバディーン性能試験場で陸軍による性能評価試験で優秀な成績を納めた同車は、砲塔の形状変更、車長用のキューポラと後部ハッチの追加、マフラーの形状変更などの改良を施した上で、さらに8台の増加試作車が製造されることが決まった。このうち3台が「コンバーチブル中戦車T3」の名称で第67歩兵連隊(現・第67機甲連隊)に送られ、4台が「戦闘車T1」の名称で第1騎兵連隊に引き渡され、実戦部隊による運用試験が実施された。 ジョン・W・クリスティー(1865年5月6日生~1944年1月11日没) 少年時代に鉄工所で働きながらクーパー・ユニオン(※)で工学を学び、軍艦の砲旋回装置の特許取得によって名声を得、潜水艦の研究、FWD自動車や軍用車両の開発で多大な功績を残した。レーサーとしてアメリカの国内レースやフランスGPにも参加している。第一次世界大戦を契機として軍用車両の開発に着手し、彼の代表作である装甲車両用のクリスティー式サスペンションを発明する。写真は完成したM1931の運転席に座るクリスティー本人。 ※クーパー・ユニオンについてはバックナンバーを参照 完成したT3およびT1の部隊引き渡しは1931年12月から始まり、翌1932年3月までに全車納品された。本格的な部隊試験はその年の春からスタートした。 開発者のクリスティーにとって幸いなことに、テストを担当した歩兵連隊と騎兵隊連隊からの評価は上々で、現場からの要請でわずかに改良を加えた以外は、大きな問題も起こすことなく試験は順調に進んでいた。この頃からM1931の高性能ぶりは陸軍関係者以外にも知られるところとなって、軍人や軍属だけでなく、民間の技術者、政治家、新聞記者などが連日のように見学に訪れるようになる。
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