為替とインバウンド需要の関係から、今後の訪日外国人観光客数を推測する
前回は最近の円高が日本企業(日本経済)に与える影響について、過去の局面(2007年後半~12年半ばまで)と照らし合わせて、そのインパクトを考察しました。リーマンショック前後の円高局面との相違点として、円高でもさほど輸出数量が減少しない可能性を指摘したほか、当時とは反対に現在は原油価格が下落基調にあるため、企業収益に与える影響がマイルドであることを指摘しました。 輸出については、日本企業のビジネスモデルが変化したことに注目。具体的には、生産拠点が国内から海外に切り替えられたため、為替の変動に強くなった可能性があるとの見方です。輸出品は、日本でしか生産ができないような財のウエイトが高まっている可能性が高く、そうした製品は価格競争から距離を置いているため、為替の変動に強いというのが一般的な解釈です。 また、原油をはじめとする資源価格の動向については、前回の円高局面の入り口にあたる07年後半は原油高が深刻な影響を及ぼしていた時期でしたが、今回は原油安によって逆に収益が潤っている状況です。当時の日本企業(日本経済)は円高が進む下で、WTI原油が150ドルを突破するなど、資源高のダブルパンチを喰らっていました。
為替とインバウンド需要の関係
一方、前回の円高局面でさほど話題にならなかったものの、今回の円高局面で懸念される影響もあります。インバウンド需要です。後ほど説明しますが、為替とインバウンド需要には無視できない関係があり、16年入り後に進行した円高の影響が間もなく表面化してくる可能性があります。 まず、データを整理します。前回の円高局面の入り口にあたる07年、訪日外客数は672万人でしたが、これは1973万人を記録した15年の35%に過ぎません。国際収支統計で旅行収支の受取額(≒訪日外国人が日本で使った金額)を確認すると、07年は1.1兆円、これも15年の3.0兆円と比較して非常に小さいと言えます。 なお、外国人消費が日本の消費に与えた影響は、日銀が最近になって公表を始めた消費活動指数をみることで視覚的に確認することができます。10年ほど前と比べて、外国人消費の存在感が格段に高まっている様子が見て取れます。少子高齢化で国内居住者の消費のパイが縮小するなか、外国人消費は日本経済にとって数少ない成長の源泉となっていますので、その動向が注目されます。