久保建英の移籍問題を整理してみた…なぜビジャレアルを退団し新天地にヘタフェが最有力とされているのか
久保の期限付き移籍契約には、完全移籍に移行する買い取りオプションが含まれていない。レアル・マドリードが寄せる期待の大きさであり、同時にビジャレアルにとっては必ずいなくなる選手となる。前半戦でいわゆる“試用期間”を終えたなかで、下部組織出身の生え抜きの若手と久保が秘める可能性を比較した場合、ほぼ同じならばおのずと前者が重用される状況が生まれる。 ビジャレアル内の動きを察したからこそ、エメリ監督との話し合いの場で久保は退団の意思を告げたのだろう。久保とレアル・マドリードは出場機会が得られない現状が改善される再移籍を、ビジャレアルもEU圏外枠が空く状況をともに歓迎する。そして、ホセ・ボルダラス監督が久保の加入を望んでいると報じられているヘタフェにも、今シーズンの苦境から脱したい思いが働いている。 暫定15位にあえぐヘタフェが16試合であげた総得点12は、エイバルと並んでリーグで2番目に少ない。サイドハーフの選手にも球際の強さを含めたハードワークが要求され、攻撃ではロングボールからのカウンターが多用されるなかで、久保の存在は大きなアクセントをチームに与える。 ヘタフェは[4-4-2]を基本システムとしている。そのなかで、かつて所属した柴崎岳(現ラ・リーガ2部レガネス)を高いインテンシティが必須となるボランチではなく、セカンドトップの形で「2」の一角で起用したときと同じ構図を、ボルダラス監督は思い描いているのだろう。 このセカンドトップならば、多少は守備面の負担が軽減される。とはいえ、ボルダラス監督のもとで2018-19シーズンには5位に躍進した“武闘派軍団”への加入は、ビジャレアルでのポジション争いになかなか加われなかった久保にとって、現時点で足りない部分を学べるメリットも生じる。 今冬の移籍市場は現地時間4日に幕を開ける。すでにビジャレアルでエメリ監督の構想から完全に外れた久保の去就に関しては、レアル・マドリードとヘタフェの交渉が最終的な局面に入っているとスペイン各紙は報じている。早ければ日本時間11日未明に敵地で行われるエルチェ戦から、新天地ヘタフェの一員として、再出発を期す久保の新たな戦いがスタートする。 (文責・藤江直人/スポーツライター)