「賛否両論」笠原と25年の腐れ縁。イタリアンシェフ桝谷周一郎がYouTubeを始めた理由
◇同級生の笠原将弘から受けた大きな刺激 友達といえば、「賛否両論」の将ちゃん(笠原将弘)も長いですね。最初のきっかけは、うちの母親が将ちゃんと同じ店(「吉兆」)で仲居をやっていたことが縁でした。 「笠原くん、うちの息子が代官山に店を出したから言ってあげて」って、それでランチに来てくれて。そこから何度も顔を出してくれて、同級生だし意気投合したんです。 彼はいつも「店を出してぇなぁ」って言ってたんですが、お父さんが亡くなっちゃって、武蔵小山の焼き鳥店を継ぎます。やがて恵比寿に「賛否両論」を出して、その後は、ご存知のようにあっという間に有名シェフになりました。 今は彼の一人勝ちですよ。動画を始めたのも将ちゃんの影響が大きかったですね。コラボもたくさんしてもらって、良い刺激になってます。 時々会うと、やっぱりずっと一緒にいた戦友だから、楽しいですよね。カメラが回ってないとこでも、ずっと昔みたいなくだらない話ばかりしてます。コラボ動画は、50歳を過ぎたおっさんたちが楽しそうに喋ってるだけって怒られますけど。でも、僕たちはカメラがまわっても、まわらなくても、とにかくしゃべる。その自然体な感じが出せてたらいいなって。 ◇料理は相手を喜ばせるために作る 今年の4月から始めたYouTubeで意識しているのは、できるだけおいしい料理を家庭でシンプルに作ること。 お店の料理がなんでおいしいかって言うと、つまりは火加減なんです。食材を火にかけて、それを音だったり、見た目だったり、どのタイミングで火を止めるのか。それは経験でしか得られないものだし、言葉にするのってすごく難しい。どれだけ煮詰めればいいですか? という質問がきたときも、一概には言えないんです。そして、お店っていうのは、アサリを煮詰めたスープだとか、複雑な味を出す努力をしています。 僕の動画では、お店では使っていない中華だしを入れたレシピを紹介していますが、これは一般家庭にあるものを意識してのこと。プロのやっている難しいことを中途半端に再現するよりも、料理の楽しさを知ってほしいんです。 料理なんて人のマネしてなんぼ。僕たち料理人は、先輩たちの技術を目と舌で盗んできました。それが自分でも出せたら、それはもう自分の味。料理の楽しさを知って、どんどん幅を広げてほしいんです。 自分が子どもの頃に初めて作った料理を褒められた喜びは今も覚えています。動画を見てくれている人にも、少しでも料理に興味を持ってほしいんです。1000人に1人でもいい、僕のレシピをマネして「おいしいかったよ」って誰かに褒められて、料理を好きになってくれる人がいたらいいなって。 理想の料理人とは、誰でもわかる料理を、誰よりもおいしく作れる人。僕もそうなれたらいいですね。 息子には料理人になれなんて全然思わない。でも、これぐらい作ったら女にモテるぞ! とは言いたいです(笑)。料理って、相手を喜ばせたくて作るもんだから。 (取材:キンマサタカ)
NewsCrunch編集部