「老化」が4歳で停止、寿命が20年を超えるウーパールーパーで驚きの発見、最新研究
再生して若返っている?
チームは次に、メキシコサラマンダーとヒトの両方に機能するエピジェネティック・クロックを作成し、両者のDNAメチル化を追跡してその老化を計算した。 その結果、明らかになったのは、メキシコサラマンダーとヒトは似たような方法で老化するものの、メキシコサラマンダーはなぜかそのプロセスを止められる、ということだ。 鍵は再生にあるのかもしれない。メキシコサラマンダーの再生能力と、彼らがほとんど老化しないという事実の間には関連があるように思われると、科学者らは言う。 別の実験のDNA分析からは、再生されたメキシコサラマンダーの四肢が、体のほかの部分よりもはるかに若いことが判明した。つまり、新しい組織は発達の初期の段階に戻っている。 「この事実はエピジェネティックな若返りに関連している可能性があると、われわれは考えています」とユン氏は言う。「とはいえ、今後さらなる研究が必要です」
ヒトに応用するには
この研究は、再生医療に新たな可能性をもたらすかもしれない。受精後まもない「胚」の段階にある哺乳類は、怪我をしたとき、傷を残す形で修復するのではなく、新たな組織を再生させるが、その能力は年齢とともに失われる。 一方、メキシコサラマンダーは生涯を通じて失われた組織を再生する。その仕組みを理解できれば、傷の治療や手足の再生、切断技術の進歩につながるだろう。 「メキシコサラマンダーが老化を止める4歳前後に、生物学的に何が起こっているのかを特定することが、彼らの再生能力を再現するうえで極めて重要になるでしょう」と、米デューク大学医学部整形外科・病理学教授のバージニア・バイアーズ・クラウス氏は述べている。 さらに、ヒトの場合、年齢を重ねるにつれて、通称「ゾンビ細胞」と呼ばれる老化細胞が、分裂を停止しているにもかかわらず体内にたまって炎症を引き起こすことがある。炎症は、がんをはじめとする、加齢に伴うさまざまな疾患のリスク要因だ。 メキシコサラマンダーにはそうしたゾンビ細胞がほとんど存在しない。それは彼らの再生能力のおかげだと推測される。メキシコサラマンダーがどのように成長を止めているのかを研究することが、人間に適用できる効果的なアンチエイジング療法を見つける助けとなるだろう。ただし、その成果が出るのはまだ先のことだ。 ユン氏は言う。「メキシコサラマンダーが時計を止める方法を解明できれば、ほかの生物でもそれを再現できるかもしれないという希望をこの研究は与えてくれます」
文=Sarah Philip/訳=北村京子