中国人の間で「日本のとんかつ」が《市民権》を得た納得の理由…「さぼてんは必食の店」定食2000円でも大繁盛していた
知る人ぞ知る、中国で「日本料理」は最もポピュラーな外国料理なのだが、流行となったのは2000年代前半のこと。実はそれ以降、長らく流行の中心に躍り出てはいない。 【写真】「ベトナムガールズバーの女王」違法接待で逮捕…28歳美人経営者の「素顔」 そんな中、北京・上海で「とんかつ」の専門業態が堅調に支持を集めている。とんかつは、中国ですでに専門業態として定着している回転寿司やラーメン、牛丼に続く新定番になり得るのだろうか。 中国在住24年。上海で外食産業のコンサルティングをしている筆者が考察したいと思う。
中国へ再挑戦を挑む外食チェーン
中国の景気停滞と消費マインドの冷え込みは、外食市場にも大きな打撃を与えている。事実、政府当局が発表する比較的堅調なマクロ的な数字に反し、肌感覚ではコロナ前と比較して2~3割程度は戻っていない。 また「反スパイ法」をはじめとする、政治的不安要素も中国市場に対するネガティブイメージに拍車をかけているように感じる。 外食関連では、今年6月にモスバーガーが中国からの完全撤退を表明したニュースが記憶に新しい。しかし一方で、中国市場へ再挑戦を挑んでいる外食チェーンも少なくない。 今年4月ワタミグループは、深圳に居酒屋「三代目鳥メロ」で再進出。同じく、トリドールHDも上海でラーメン「ずんどう屋」、牛肉専門店「肉のヤマ牛」を出店し、再挑戦を始めている。 その最たる理由は、やはり中国のマーケットの大きさだろう。ひと昔前と比べれば、中国の一人当たりGDPは大幅に上昇。上海市を例に挙げると、2021年地点で一人当たりGDPは2万6900米ドル(約400万円)に到達している。 購買力と文化レベルの向上。留学や海外旅行を通じ、食の多様化が進んだことを踏まえると、中国のマーケットとしての魅力は、むしろ以前より増しているようにも感じる。
中国で「とんかつ」が流行った理由
そんな中、グリーンハウスフーズが展開している、とんかつの「さぼてん」が着実に支持を集め話題となっている。 「とんかつ新宿さぼてん」が中国に進出したのは2013年。既に上海で6店舗。北京で18店舗を展開し、次のステージを見据えている。今年7月には、中国最大のグルメナビサイトと評される『大衆点評』で「2024年 必食の店」に選ばれるなど、その注目度は高い。 また、先駆けとしては「とんかつ和幸」が、2008年に一足早く進出を果たしている。こちらは成都に1号店を出店し、現在成都で3店舗。天津でも同じく3店舗を展開している。 振り返れば2000年代、ラーメン業態を筆頭に、間違いなく日本料理は流行の中心にいた。そんな中、次に流行る業態も日本料理から出るのではないかと、多くの業界関係者が考えていて、とんかつは筆頭候補だった。 その理由は以下の3つだ。 (1)日式のとんかつと類似する、パン粉で揚げた豚肉料理「猪排」が存在していた (2)中国は食肉の約6割を豚肉が占める、圧倒的な豚食文化だった (3)すでに台湾で人気を博していた 現在、台湾市場と中国市場を同一視している業界関係者はあまりいない。ただ、当時は台湾も中国も同じ中華系民族。近く経済力が付けば、中国人も台湾人に近い趣向を持つだろうと信じきっていた。