なぜソフトバンク東浜は「信じられない」ノーノー偉業を達成したのか…”愛妻”甲斐の存在と亜大”伝統”シンカー
試合前に海の向こうで起こった快挙との不思議なリンクもあった。エンゼルスの大谷翔平が「3番・DH」で出場したレイズ戦でエンゼルス先発のリード・デトマーズがノーヒットノーランを達成したのだ。東浜は球場のウェイトルームのテレビで観戦していたという。 「みんなで見ていた。確か5回で50球くらいで。『おまえも今日頑張れ』と色んな人に言われた。意識はしていなかったんですが、偶然ですね」 東浜も5回49球のペースでノーノーを続けた。 公式会見で偉業達成の一番の要因を聞かれた東浜は、「(甲斐)拓也と一緒に取ったノーヒットノーラン」と断言し、女房役の甲斐のリードを称え、感謝した。 「常にコミュニケーションを取っていた拓也のリードが僕の中では大きい。ずっと(コンビを)組んで、いい時も悪い時もどっちも経験してきた。拓也に引っ張ってもらいながら、要所では自分の我も通しながら、駆け引きというか、コミュニケーションが取れたのが、一番大きかった」 毎イニング、先頭打者への配球など、互いに意思を確認する作業を続けた。その間、甲斐はノーノーの話題について一切触れなかったという。 全27アウトの結果球の配分を調べると、ストレートが10球、シンカーが9球、カットが8球と、ひとつの球種に偏らずに配球されているのがわかる。 また一回り目の前半は、右打者に対しては内角ストレートで積極的に使って攻め内角、3回り目となる後半には、カットを勝負球として多用するなど、打者の先手を取って、その狙いの裏をかくリードの工夫があった。 福岡在住のソフトバンクOBでもある評論家の池田親興氏は、「ストレートの球威が最後まで落ちなかった。ストレートが良かったから、打者はシンカー、カットという変化球に手を出した。今日はすべての球種をカウント球、勝負球に使えるコントロールがあった。投げながら、10年目にして何かのコツをつかんだのかもしれない。特に山川を徹底して抑えこんだ甲斐のリードが素晴らしかった」と分析した。 5月に入って7戦6発と止まらない西武の主砲のバットをいかに止めるかがテーマだった。2回の第1打席は、横浜DeNAの山崎康も武器とする亜細亜大”伝統”のフォークのように落ちる“宝刀“シンカーで、三塁ゴロに打ち取り、5回の第2打席は四球で歩かせたが、8回の第3打席は外角のストライクゾーンギリギリで動かすカットでセカンドゴロに終わらせた。ここでも甲斐の山川の狙いの裏をいく“揺さぶりのリード“があった。 今季6試合に先発して4勝1敗。そして中6日で、次回先発予定の18日の西武戦は、故郷の沖縄での凱旋登板となる。 「今日は今日で終わったこと。またここから次の登板に向けて調整をしていかなくちゃいけない。次も西武。今回のピッチングを次にいかしていかなくちゃいけない。それを含めて1週間準備したい」 2017年の最多勝男は、5年ぶりの2桁勝利復活へ、覚醒の時を迎えたのかもしれない。